研究課題/領域番号 |
22K03200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
神前 裕 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80738469)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 連合学習 / 文脈 / オペラント行動 / 強化スケジュール / 消去後の再発 / 行為と習慣 / 薬物依存 / 習慣 / 依存 / 文脈刺激 / 超音波発声 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちヒトを含む動物の自発行動は、それがもたらす報酬によって形成・維持され、一般的には、行動ー報酬関係の繰り返し経験に伴って次第に習慣的な形態へと変化し、またある場合には行動が依存的な状態へと変化することが知られている。本研究ではこうした「行動の自由」が損なわれていく過程について、行動が生起する文脈刺激が持つ機能の変化に着目し、文脈刺激が自発行動に及ぼす影響を実験的に詳細に明らかにし、それにより過度な習慣や依存の形成を予防するための知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
研究計画に記載した内容のうち、文脈刺激が行動の制御に対して及ぼす影響、特に階層的に行動の表出を「機会設定」する機能についてラットを用いた実験的検証を行なった。まず、長期訓練によって習慣化した行動が、特定の文脈で消去された後に別文脈で再発する時(文脈による更新効果)、どのような連合構造が再発行動を制御するのかについて検証した。具体的には、習慣化した行動は、消去後に習慣として再発するのか、それとも目的的な性質のもとに再発するのかという問題を検証した。ラットを用いた複数の実験から、訓練された行動が消去後に文脈ABA更新効果を通じて再発する時、元の訓練時に行動を制御していた連合構造(行動ー結果連合または刺激ー行動連合)が、同様に再発行動を制御することを明らかにした。さらに、実験手続きとして元の訓練直後ではなく、消去後に行動の強化子を低価値化することで、再発時の行動が刺激ー行動連合による習慣から行動ー結果連合に制御される目的的行動へと遷移することも併せて明らかにした。これは、習慣として確立された行動が消去訓練自体によって目的的性質を取り戻すことを意味しており、文脈による消去と再発の制御という問題を超えて、より一般的に道具的行動の制御過程に関して重要な意義を持った結果である。これらの成果は項目10に記載する通り国際学術誌に査読付き論文として掲載された。 一方で、長期的な道具的訓練に伴い文脈刺激が直接的に強化子を予告するようになるため、これが刺激競合を通じて行動ー強化子連合を弱める、すなわち習慣形成を強めるという仮説に関しても複数の追加実験を実施したが、結果は総じて仮説を支持しないものであった。この問題については、条件を変えて次年度においても追試を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、習慣化した自発行動に対して文脈刺激が及ぼす制御過程について新規かつ重要な知見を得ることができ、その成果は査読付き論文として国際誌に掲載を行なった。一方で、文脈刺激が直接的に行動ー結果連合との間に連合的競合を引き起こすことで習慣形成が促されるという仮説については、さらに検証を重ねる必要があり、また、習慣から依存への進展を検証する実験については進捗が予定よりやや遅れている。これらを踏まえ、全体としては「おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、特に習慣から依存への進展の問題について計画書に記載した通り実験を遂行し、並行して成果を論文または学会において発表していく予定である。
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