研究課題/領域番号 |
22K03201
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
畑 敏道 同志社大学, 心理学部, 教授 (50399044)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | インターバルタイミング / 時間評価 / ラット / 神経基盤 / 背側線条体 / 海馬 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトを含む動物は,秒から分程度の時間の長さを評価し,それに基づいて適応的な行動を取る。このような行動をインターバルタイミングと呼ぶ。本申請課題の目的は,インターバルタイミングにおいて,評価された時間の長さがいかなる神経メカニズムによって記憶されるのかを明らかにすることである。特に,時間の長さの記憶形成における背側線条体や海馬でのさまざまな神経伝達物質の役割を明らかにする。これによって時間の長さの評価という心的機能を支える神経メカニズムが明らかになるだけではなく,これらの部位や神経伝達物質が関与する神経疾患などの理解にもつながることが期待される。
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研究実績の概要 |
本年度は2つの実験を行った。まず前年度から引き続き行っていた,新たなインターバルタイミング課題である反応持続時間分化強化(differential reinforcement of response duration, DRRD)スケジュールの妥当性を検討する予備実験によって,従来用いていたピークインターバル手続きや間隔二等分課題よりも速やかに課題獲得が可能であることが確認された。この課題では,ラットのレバー押し持続時間が一定の基準よりも長かった場合にのみ強化子を提示した。基準となる時間を徐々に延ばしていくと,10セッション程度で5秒程度のレバー押しを持続することができた。この課題を用いて本実験を実施した。本実験では,両側の背側線条体にコリン作動性ニューロンに選択的な神経毒を投与することで,同部位のコリン介在性ニューロンを不可逆的に破壊した後,DRRD課題を実施して時間弁別を獲得させた。その結果,実験群の基準時間の延びは統制群よりも遅かった。また,最も長い基準時間(5.1s)に到達するまでに要したセッション数は,統制群では最大で9セッションだった。一方損傷群では12セッション経過しても半数の個体しか最も長い基準時間に到達しなかった。これらのことは,同部位のコリン介在性ニューロンが時間の長さの記憶獲得に関与していることを示唆している。この結果は,ピークインターバル課題を用いた我々の先行研究(Nishioka & Hata, 2024)の結果と類似している。このことは,同部位のコリン介在性ニューロンが時間の長さの記憶形成において重要な役割を持つという知見が課題を超えた一般性を持つことを意味している。これとは別に,実験に必要なフードペレットディスペンサを安価に作成することに成功した。3D CADによってパーツの図面を作成し,3Dプリンタで印刷することによって,従来の20分の1程度のコストでディスペンサを利用可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DRRDスケジュールの採用によって,時間的コストを下げることが可能となり,これまでの研究で得られていた知見をさらに強固なものにすることができたため,大無順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DRRDスケジュールで得られた知見は,コリン介在性ニューロンが時間の長さの記憶獲得にとって重要であるという説明とは別に,レバーを持続的に押し続けるという運動の障害によっても説明できる。したがって,今後の研究ではこの可能性を排除するための実験を実施する。具体的には,音や光を手掛かり刺激として,手掛かり刺激の提示によってレバー押しを開始させ,提示が終了すればレバーを離すという課題を獲得させる。この課題では時間の長さの記憶を獲得必要がなく,手掛かり刺激の提示が終わればレバーを離すという方略によって遂行できる。したがって,コリン介在性ニューロン損傷動物において,この課題を統制群と同等に獲得することができれば,運動の障害による説明を排除することができる。
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