研究開始時の研究の概要 |
代数曲線の対称性を表現するガロア点の研究を行う. ガロア点理論と他分野(有限体上の有理点, 符号理論, 群論, 有限幾何)との関連が見出され, その理論の奥深さが認知され始めている. 代数曲線に対するガロア点配置の一般論を構築すること, ガロア点理論を核とした分野横断研究を推進すること, の2つを目的として研究を行う. 前者に関しては, ガロア点が一直線上になく, 3つのガロア点が三角形をなすときの幾何学を明らかにする. 後者に関しては, 有限数学, 群論, 組合せ論を中心に他分野とガロア点理論の相互作用を創出, 探索する. それによりガロア点理論を核とした分野横断研究を推進する.
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研究実績の概要 |
代数曲線に対するガロア点配置の一般論の構築に取り組み、ガロア点理論を核とした分野横断研究を推進した。平面曲線に対して、射影平面内の点からの射影が誘導する関数体の拡大がガロアであるとき、射影の中心点をガロア点という。令和5年度は次の2つの成果があった。 (1)「ガロア点を2つもつ」という性質が商曲線に落ちるか、または商曲線の立場からは割る前の曲線の(「ガロア点を2つもつ」という)性質から落ちてきているか、を調査した。特に、その性質が商曲線に落ちるときに上の曲線を ancestor、下の曲線を descendant と呼び、また付随して maximal, minimal といった概念を導入した。具体的成果として、ガロア点を2つもつ曲線として認知されている Fermat 曲線と高橋曲線について descendant を決定した。例えば Fermat 曲線の descendant は Fermat 曲線に限定される。特に、素数次の Fermat 曲線はこの意味で minimal である。 (2)三枝崎剛氏(早稲田大学)との共同研究により、グラフに対するガロア点を導入し, 完全グラフのガロア点による特徴づけを与えた。2007年、Baker-Norine は代数曲線との類似性を有限グラフに見出し、グラフに対する Riemann-Roch の定理を証明した。そこでは、グラフ上の因子とその線形系の理論が代数曲線論の類似として展開されている。また、代数曲線の自己同型群の位数に関する Hurwitz 上限に対応する結果のために、Corry によって harmonic group action が導入されている。本研究ではこれらの道具(グラフ上の因子、線形系、harmonic group action)を利用して、グラフに対するガロア点を導入することに成功した。
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