研究課題/領域番号 |
22K03228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 保 京都大学, 理学研究科, 教授 (20211716)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 保型形式 / 二次形式 / エルミート形式 / 保型表現 / 保型的L関数 / 周期 |
研究開始時の研究の概要 |
市野篤史氏(京都大学)と応募者はGross-Prasad予想を精密化して,特殊直交群上の保型形式の周期をある種のL函数の値と具体的に関係付ける明示的な周期公式を予想として提出した.これは現在では市野・池田予想として広く知られている.この予想にはL関数の特殊値と周期の他にある種の局所因子が現れる. このような局所因子は格別表現の存在と深いかかわりをもつことがわかっている.またた,Whittaker関数,Siegel級数など古典的によく研究されている特殊関数もこのような局所因子の一例であると考えられる.したがってこのような局所因子を深く調べれば,新たな興味深い特殊関数の研究につながると考えられる.
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研究実績の概要 |
1990 年代の初め,Gross とPrasad は特殊直交群の組の上の保型形式の周期に関する一連の予想を提出した.これを精密化して,市野篤史氏(京都大学)と筆者は特殊直交群上の保型形式の周期をある種のL函数の値と具体的に関係付ける明示的な周期公式を予想として提出した.これは現在では市野・池田予想として広く知られており,保型形式の周期の理論の一つの大きな目標となっている. このように保型形式の周期が市野・池田型の公式によりL関数の特殊値と結び付けられるには問題の周期が局所的に重複度1の条件を満たすことが必要であると考えられる。局所的にそのような重複度1の条件が成り立つとき、市野・池田型の公式には局所的な因子が現れ、それは局所体上の代数群の表現を実現する特殊関数とも考えられる。本研究ではこのような視点から大域的な周期の研究、局所体上の特殊関数の研究を行っており、とくに退化主系列表現に付随したSiegel級数の挙動を研究している。 二次形式の拡張GKデータについて、有限体上の交互増大フィルター付きの二次空間対を経由することによりより簡明な構成をすることができた.これに関する論文をKyoto J.Math. に投稿し、掲載されることが決定した. また、同様のアイディアに基づき、エルミート形式に対して有限体上のフィルター付きシンプレクテック形式とフィルター付き二次空間の組を付随させることができ、それを用いてさらにGK三つ組の構成にできるという知見を得た。これに関する論文はほぼ書きあがっており近々投稿する予定である。また、GK三つ組からジーゲル級数が決定されることもほぼ証明が完了しており、現在論文を執筆中である. 今年度も研究集会等に対面で参加することはあまりできなかったが、主に研究用の書籍を購入することにより研究環境の改善を図った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は二次形式のGross-Keating不変量の研究をとりまとめ、論文としてKyoto J.Math,に投稿して掲載が決定した。エルミート形式のGK三つ組の定義に当たっては、有限体上の交互増大フィルター付きベクトル空間を経由することにより理論が簡明になることが分かったので、二次形式の場合にも同様の構成が可能であることを示した。これにより二次形式の拡大GKデータの構成がより見通しよくできることが分かった。これに関しては現在論文を執筆中である。また、ジーゲル級数がGK三つ組により決定されることについてもほぼ証明が完了し現在論文を執筆中である。これらは室蘭工業大学の桂田英典氏との共同研究であり、当初の研究目標のおよそ9割程度を達成したと思う。
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今後の研究の推進方策 |
Siegel級数は退化主系列表現の実現を与える特殊関数と考えられる。退化主系列表現の超関数指標の原点近傍の挙動などの表現論的な不変量がこのような特殊関数の挙動と深い関連があると思われるが、その詳細はいまだ明らかになっていない。実代数群の表現論に関してはD加群などの道具が使えることから、特殊関数の挙動はそれが満たす微分方程式系を通じて表現論と密接な関係がある。p進代数群についても特殊関数の漸近的な挙動と表現論に間にあると考えられる関係を見出すことが今後の目標である。とくにジーゲル級数に対して成り立つ帰納的公式を超幾何関数の隣接関係の間の類似に着目して研究を行いたいと考えている. 国内外での研究集会に参加することにほぼ障害がなくなったため、今後は可能な範囲で研究集会に参加し国内外の研究者と交流を図りながら研究を進める予定である。一方でオンラインによる交流も便利になったため、引き続きオンラインによる交流も図る予定である。特に若い世代の研究者と交流を図り、後進の育成に力を注ぎたいと考えている。
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