研究課題/領域番号 |
22K03230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
水野 義紀 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (30546388)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アイゼンシュタイン級数 / ランキン合成積 / ペアの類数 / グロス・ザギエ公式 / ハッチンソン予想 / 正規化ノルム / モジュラー形式 / L関数の特殊値 / 周期公式 |
研究開始時の研究の概要 |
種々の正則アイゼンシュタイン級数に対し適切なノルムを定め、その定義の妥当性を検討する。実施にあたって、カスプ形式で成立する様々な周期公式やL関数の特殊値の理論、微分作用素論、数論的離散群の基本領域の形状、非正則アイゼンシュタイン級数の定数項、コーエン・アイゼンシュタイン級数に付随するランキンL関数の厳密値などを考察の対象とする。広い意味でのモジュラー形式論および関連する整数論も視野に入れつつ、得られた事柄の応用を模索し、新たな知見の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
1.コーエン型アイゼンシュタイン級数から定まるランキン合成積に対し、ある範囲内の半整数点での特殊値の公式を作ることができた。特殊値は、有理数倍を除いてリーマン・ゼータ関数の奇数点での値と円周率の冪で表すことができる。この公式は、ジーゲル・アイゼンシュタイン級数に付随するケッヒャー・マース級数の理論(伊吹山・桂田の明示式と荒川の留数公式)を活用することで得られる。ケッヒャー・マース級数の応用としても興味深い。 2.二元二次形式のペアにSL(2,Z)が作用するが、その同値類の個数はペアの類数とよばれている。正定値二元二次形式のペアの類数を与える初等的な閉じた公式を得ることができた。先行研究の公式よりも適用範囲が一般になっている。 3.項目2で得たペアの類数の明示公式はハッチンソンの予想に応用をもつことが分かった。特異モジュラスの類多項式から定まる終結式を明示的に与えるグロス・ザギエ公式がある。グロス・ザギエ公式の拡張を数値実験により試みたのがハッチンソンの予想である。ペアの類数の明示公式を一般判別式の種の指標と結びつけることで、この予想を部分的に解決することができた。項目2,3について大阪大学の整数論・保型形式セミナーおよび京都大学数理解析研究所での研究集会で口頭発表した。関連する事柄を虚二次体の類数に関する研究成果と併せて、徳島大学談話会でも口頭発表した。この研究の遂行に伴って、次年度計画に関わるヒルベルト型アイゼンシュタイン級数についての知見を増やすことができた。 4.ガウス数体上の半整数2次エルミート行列の跡から構成されるディリクレ級数の解析接続に関して、埼玉大学における非公開セミナーで口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コーエン型アイゼンシュタイン級数から定まるランキン合成積の半整数点での特殊値に関し、具体例に留まらずある程度一般的な公式作ることができた。志村氏による少なくとも一方がカスプ形式の場合の定性的結果との関係については、はっきりとした結論が下せていない。一方、ペアの類数公式とハッチンソン予想に関しては予想外の成果と言える。この取り組みに伴ってヒルベルト型アイゼンシュタイン級数に関する経験や情報が得られていることも、次年度計画に寄与するものである。いくつかのプレプリントの改訂作業も折りに触れて行った。
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今後の研究の推進方策 |
ヒルベルト・アイゼンシュタイン級数の正規化ノルムの整数論を調べていく。土井・長沼リフトのアイゼンシュタイン級数の場合に当たるものや、関連する周期公式、ヒルベルト・モジュラー群の基本領域、ヒルベルト・マース形式に関わる微分作用素について、情報を収集・整理していく。Choieの論文Periods of Hilbert modular forms, Kronecker series and cohomology (Adv. Math. 381 (2021))などがヒントになる可能性がある。またハッチンソン予想を解決した論文の執筆も集中して行う必要がある。グロス・ザギエ公式のさらなる一般化の可能性も専門家と情報交換しつつ検討したい。
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