研究課題/領域番号 |
22K03234
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
橋本 康史 琉球大学, 理学部, 准教授 (30452733)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | セルバーグゼータ関数 / 跡公式 / length spectrum / 普遍性定理 / ラプラシアンのスペクトル |
研究開始時の研究の概要 |
双曲多様体上の素測地線に関するオイラー積で定義されるセルバーグゼータ関数は、素元のノルムの重複の様子や零点の分布などにおいて多様体ごとに相違点があり、その相違はとくに多様体の基本群が数論的な場合と非数論的な場合とで顕著であると考えられている。本研究では、このように多様体ごとに異なるセルバーグゼータ関数の性質を跡公式と素測地線の分布の観点から明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究では、Drungilas-Garunkstis-Kacenas(2013)と見正(2021)によるセルバーグゼータ関数の普遍性定理と同時普遍性定理をより一般的な数論的な基本群に対して一般化し、普遍性定理が成り立つ非絶対収束域内の領域を拡張した。2023年度はまず、この研究における同時普遍性定理が成り立つ基本群の組の共役類の跡(trace)の集合に関する条件を緩和したうえで、2022年度の成果に加えて学術論文としてまとめたところ、国際学術誌に2024年度発行分として掲載された(研究発表欄を参照)。 ただ、これらの普遍性定理が有効な領域は必ずしも最良とはいえず、この領域を改良するためには、ラプラシアンの固有値であらわされるセルバーグゼータ関数の非自明零点の分布をより詳しく調べる必要がある。2023年度の研究では、ラプラシアンの固有値の指数和に関するある種の無限和が絶対収束する条件と、絶対収束しないが条件収束する条件を明らかにした。絶対収束する条件は古典的なワイル(Weyl)の定理からほぼ明らかだが、条件収束する条件については収束性に関するデリケートな議論を行う必要がある。本研究の代表者は(複素)解析数論的な手法を用いることでそれを解決し、具体的な収束性の条件を導くことができた。本研究の成果についてはすでに、国内の研究集会で発表している。学術論文としてまとめるにはまだ不十分な部分があり、引き続き研究を進め、国際学術誌への掲載を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に行ったセルバーグゼータ関数の普遍性定理と同時普遍性定理に関する研究については、今年度はじめに幾分改良を行い、その内容をまとめた論文を国際学術誌に掲載することができた。また、ラプラシアンの固有値の指数和については、素測地線定理の誤差項評価に関する一連の論文で頻出しており、その評価を改良することが誤差項評価の改良に直結すると考えられている。そのため、今年度に得られた研究成果はセルバーグゼータ関数の普遍性だけでなく、素測地線分布を調べる際にも大きな役割を果たすことが期待できる。以上の理由から、総合的に「おおむね順調に進展している。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度から2023年度にかけて行った研究の成果であるセルバーグゼータ関数の普遍性定理はlength spectrumの数論的な表示と既知のラプラシアンのスペクトルの分布に関する知見から導かれたものである。また、ラプラシアンの固有値の指数和に関する研究では「(条件)収束する」ことがわかっただけで、今のところ素測地線定理の誤差項評価や普遍性定理の適用範囲を改良するには至っていない。今年度は、length spectrumの数論的な表示をより一般的なarithmeticな群に拡張するとともに、ラプラシアンの固有値の指数和についても収束性だけでなく、具体的な漸近的な評価を行う。とくに、スペクトルゼータ関数の係数に指数を付加した関数の解析性を調べることで、新たな知見を得られると期待している。
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