研究課題/領域番号 |
22K03316
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
四ッ谷 直仁 香川大学, 教育学部, 准教授 (00806755)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 複素構造変形理論 / 自明な標準束を持つ複素曲面 / トーリック多様体 / カラビ-ヤウ多様体 / T-variety / ケーラー多様体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題の概要を一言で述べると, (a)標準ケーラー計量の存在に必要十分となるGIT-安定性が何であるかを突き止める (b)与えられたコンパクトケーラー多様体が,(1)で発見したGIT-安定性の意味でいつ安定・不安定となるかを, 複素構造変形理論の立場から判別する 事にある.これまで主な研究対象として取り扱ってきたトーリック多様体については,「付随する凸多面体の情報によりケーラー計量を記述できる」という特質を持つ反面,複素構造が変形できないという不具合をもたらすため,トーラス作用を1次元分低くしたT-varietyという代数多様体にシフトし,上述(a),(b)に関する問題の解決を試みる.
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研究実績の概要 |
2022年度は土井氏との共同研究により,標準束が自明な3重点を持ちうる単純正規交叉複素曲面に対する微分幾何学的スムージングを構成し,論文がジャーナル(Complex Manifolds)に掲載された.また以前より計画していた,「ピカール数2の3次元の(ダブリング構成で得られた)カラビ-ヤウ多様体の微分同相性を全て識別する」という研究プロジェクトを成功させ,こちらもジャーナル:Rendi del Circ Math di Pal Series 2において,本研究内容が掲載された.ジャーナル Complex Manifoldsに掲載された同論文では,1983年のFriedman(Ann. Math 118(1983)75-114)によるK3曲面のスムージング理論を皮切りに,log幾何学を駆使して成功している代数幾何学におけるスムージング理論(Kawamata-Namikawa(1994), Felten-Filip-Ruddat(2019), Chan-Leung-Ma(2019))を微分幾何学的に再構成する事に成功している.一方で,ケーラ幾何学で昨今注目されている強カラビ夢構造に関する結果として,藤田健人氏(大阪大学)との共同研究において,「どの様なトーラス不変な因子に沿ってもスロープ半安定なBott多様体は射影直線の直積に限る」事を証明した.またこの結果と同値かつ独立な定理の主張として「任意のトーラス不変な因子に対して二木不変量が常に消滅するBott多様体は射影直線の直積に限る」事を小野肇氏(筑波大学),佐野友二氏(福岡大学)との共同研究にて取りまとめている.この結果を示すにあたって重要な鍵は, Brunn-Minkowski不等式と呼ばれる凸多面体の幾何学の技法を応用し,DF不変量の計算をモーメント多面体上の積分計算に帰着させている部分にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は大学運営に関わる仕事や,教育学部特有の仕事が急激に増えた関係上,自身の数学研究に携わる時間が大幅に減ってしまったが,普段の授業準備を今までの教育経験を活かしながら効率的に行うことで,何とか研究遂行に必要な時間を確保した.またパンデミックが終息しつつあり,多くの国際研究集会や各地での学術的会合が開催されるようになったため,スケジュールを工面し,積極的に参加したのも,研究の進捗に大きく功を奏したと思われる.さらに,最近ではZoomを用いたハイブリッド形式の研究集会やセミナーなどがオンラインで開催されているため,それらを有効に活用しながら,地方大学の持つ不利な条件を極力回避するなどの工夫が上手く機能しているのかも知れない.とはいえ,オンライン上の議論では議論できる内容にも限界があり,最前線で行われている研究内容の議論に食いついていくのは容易ではない.そのため,関係研究者の集う研究集会に対面で参加しアドホックな議論を行うことや,研究内容に密接に関わる研究者の所属する研究機関に直接訪問するといった研究交流は非常に重要である.事実,大阪公立大学で研究発表した際に知りあった国外研究者(ロシア)を香川大学に招聘し,新たな共同研究プロジェクトを立ち上げる基盤を築くことできたのは,対面参加ならではの利点といえる.また,パンデミックが終息しつつある中で国際研究集会中に交流を温めた研究仲間と,帰国後もzoomなどを利用して議論内容やその後の計算の進捗を吟味するなど,対面とオンラインによる議論を相互に上手く活用している点も研究進展に大きく寄与していると思われる.2023年度も,そうしたacademic communicationを足がかりに前年度に見つけた新たな研究課題の解決を図り,更なる飛躍を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいる単独研究プロジェクト「射影トーリック多様体上のsemistable pair」をいち早く完成させる事を目標とする.これは(1)コンパクトケーラー多様体上のK-energyの漸近挙動をチャウ多面体とHyperdiscriminant多面体の情報で巧みに捉えることに成功したPaulの安定性(semistable pair):Annals of Mathematics 175 (2012), pp.255-296. 及び (2) Gelfand-Kapranov-Zelevinsky理論のA-discriminantのテクニック を射影トーリック多様体上で実行することで実現可能と思われる.まずはこのプロジェクトを完結させたい.
また,土井氏との共同研究で証明した「標準束が自明な単純正規交叉複素曲面に対する微分幾何学的スムージングの構成」では,大きく分けて(a)Enriques曲面などのその他の複素曲面に対する微分幾何学的スムージング理論の構成 (b)複素3次元以上のカラビ-ヤウ多様体(もしくはハイパーケーラー多様体)に関するスムージングの構成(高次元一般化) の2つの方向性が考えられるが,(b)の研究課題は非常にchallengingな問題と予想される.実際,複素3次元以上では(K3曲面の時などとは違い)変形の障害空間が一般には消えず,複雑な変形理論が展開されると思われる.代数幾何学における滑らかなカラビ-ヤウ多様体のスムージング理論ではlog幾何学やT^1-持ち上げのテクニックが有効に使用されているという事なので,今後はlog幾何学の勉強を中心に,代数幾何的観点と微分幾何学的観点の双方の強みや利点を吸収しながら研究課題の解決を目指したい.
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