研究課題/領域番号 |
22K03327
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
谷 太郎 久留米工業高等専門学校, 一般科目(理科系), 准教授 (40421359)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 非小平型特異点 / 楕円ファイバーカラビ-ヤウ / F理論 |
研究開始時の研究の概要 |
F理論では楕円ファイバーカラビ-ヤウ空間の特異点の幾何が素粒子の性質を決めると考えられている。特異点が有限種類の ”小平型” に収まる場合の幾何から物理への翻訳ルールは既知であったが,近年,小平型以外に ”非小平型” 特異点の存在が判明した。この場合でも,特殊なクラスの3次元カラビ-ヤウ空間では幾何と物理の関係が維持されることが知られているが,一般論はまだない。本研究では,様々なクラスのカラビ-ヤウ空間を具体的に生成した上で,コニフォールド特異点の解消についての新技法を用いて非小平型特異点の構造解析を進め,非小平型の分類,および,非小平型の幾何から物理への翻訳ルールの一般論を打ち立てる。
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研究実績の概要 |
3次元の楕円ファイバーカラビ-ヤウ多様体の「multiple enhancement」における非小平型特異点について研究を進めた。このような多様体では、2次元底空間における余次元1の discriminant locus (複素1次元の線)の上で楕円ファイバーが退化するのだが、その特異性 G が、余次元2の特別な点の上で G' に enhance する現象が生じる。このとき、rank G' が rank G よりも2以上大きい場合を multiple enhancement といい、その特異点の構造はこれまでよくわかっていなかった。私は G = SU(5) で G' = E6, E7, E8 の各場合について、特異点解消を具体的に実行した。その結果、G'= E6 の場合、G → G'の近づき方に応じて multiple enhance の仕方は複数あり、対応して、特異点解消によって生じる例外集合も複数種類あることがわかった。交点行列を見ると、そのうちの一つは通常の E6 Dynkin 図(小平型)であるが、残りは、一部の node を取り去った "incomplete E6 type" (非小平型)になっていることがわかった。これは "complete/incomplete" resolution と呼ばれる現象で、rank 1 の(multiple ではない普通の)enhancement で G'/G が擬実表現を含む場合に生じることが知られていた。同じ現象が multiple enhancement においても生じることをはじめて明らかにした。 また、E7, E8 においては、complete resolution は実行できず、incomplete resolution のみが可能であることもわかった。このことは非小平型特異点の普遍性を示すものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元の楕円ファイバーカラビ-ヤウ多様体の「multiple enhancement」における非小平型特異点について理解を進めることができた。現在、結果を論文としてまとめているところである。
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今後の研究の推進方策 |
multiple enhancement において、incomplete resolution によって非小平型の例外集合が得られることはわかった。しかし、G' = E8 の場合だけは、その物理的解釈がうまくできない。特異点の構造は、超弦理論(F理論)における粒子スペクトルの種類と数に読み替えることができるのだが、E8 の場合、非小平型特異点から読み取ったスペクトルが理論の量子条件(アノマリー相殺条件)を破ってしまうのである。まずこの原因を明らかにし、解決する。次に、物理的により現実に近い、4次元の楕円ファイバーカラビ-ヤウ多様体における非小平型特異点の構造解析に着手する。
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