研究課題/領域番号 |
22K03330
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
針谷 祐 東北大学, 理学研究科, 教授 (20404030)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 確率解析 / ブラウン運動 / 関数不等式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,オルンシュタイン=ウーレンベック半群に代表されるマルコフ半群の超縮小性と,それに付随して現れる関数不等式をより深く理解することである.超縮小性とは,関数にマルコフ半群を作用させることによって関数のもつ可積分性のオーダーが半群のパラメータに関して指数的に改善されるという性質であり,関数不等式の一つで無限次元解析に有用な対数ソボレフ不等式と同値であることが知られている.本研究ではブラウン運動に基づく確率解析の手法を用いることにより,申請者自身の先行研究も含め,これまでよりも広い枠組みの下で考察を行い,従来の研究を深化・発展させることを企図する.
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研究実績の概要 |
1.幾何Brown運動の時間積分は指数Brown汎関数とよばれる.前年度にまとめ,プレプリントサーバarXiv上で公開したプレプリントでは,指数Brown汎関数に関する松本--Yorの2000年の結果を援用して,指数汎関数を非因果的要素にもつ非適合型経路変換の下でのBrown運動の像測度に対してGirsanov型の測度の変換公式を与え,その応用を述べた.2023年度の研究では,Wiener測度,すなわちBrown運動そのものの像測度,の指数Brown汎関数に付随した分解公式を見出し,それを用いれば上記の変換公式がより一般的に捉えられることが分かったため,結果の拡張も含めた改訂を行い,arXiv上での再公開を行った.応用としても,例えばOrnstein--Uhlenbeck過程を例に含む,より広いクラスの重みでBrown運動を摂動して得られる確率過程の像測度に対して,上記と類似の経路変換の下での不変性が得られる.
2.Brown運動はスケーリング則や時間逆転といった,確率法則の意味での様々な不変性をもつことが知られている.前年度に得られた新たな不変性に対し,Pitman変換とよばれる経路変換との関係をより明確にするとともに,いわゆるPitmanの定理(Pitman's 2M-X theorem)に基づく別証明を与え,それらを取り込む形でのプレプリントの改訂を行い,arXiv上で再公開を行った.また,その過程において,一つ目の項目におけるWiener測度の分解公式に類似の公式の成立に気づいたため,応用も含めた考察を引き続き行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
補助事業期間前から取り組んでいた指数Brown汎関数に関する研究が当初の想定以上の進展をみせ,前年度の結果の拡張や新たな知見が得られたためにその取りまとめに時間を要し,上記欄の評価にとどめることとした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の対象であるMarkov半群の典型例に,Gauss空間上に定まるいわゆるOrnstein--Uhlenbeck半群があり,それが有する超縮小性はGauss空間上の対数型Sobolev不等式と等価である.Ornstein--Uhlenbeck半群は,Brown運動の独立増分性を通じて条件付期待値を用いた表現をもつ.このように,研究課題と令和5年度の研究成果との間にはBrown運動との研究対象が通底しており,Brown運動に対する新たな事実が明らかになることによって,ある種のMarkov半群やそれに付随する関数不等式の研究へのフィードバックが期待される.例えば,「5.研究実績の概要」欄の両項目で述べたWiener測度の二つの分解公式がGauss測度の下での新たな関数不等式を導く可能性もあるため,同時並行的に研究を進めることが重要と考えている.
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