研究課題/領域番号 |
22K03332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
阿部 敏一 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 講師 (40749157)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 平均 / 行列 / ジャイロ群 / 半群 / 距離 / 中点 |
研究開始時の研究の概要 |
数学的に興味がある対象は,複数の構造を持ち,それらが互いに関連しあっていることが少なくない.極端な場合,特定のひとつの構造がわかれば,他の構造についてすべてわかってしまうことすらある.例えば,実ノルム空間の場合,同じ線形空間に対して異なるノルム(距離構造)が入ることはあるが,逆に距離空間として同型ならば自動的に実線形空間として同型にならざるを得ない.つまりノルム空間においては,距離構造が代数構造についての情報をすべて持っているということである.同様の結果はノルム空間以外でも見られる.本研究の目的は,距離空間や平均といった構造の裏に隠れている(相性のいい)代数構造を見つけることである.
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研究実績の概要 |
行列平均がジャイロ可換ジャイロ群の代数的中点として記述できるための条件について着目し一定の成果を得ることができた.本研究課題では特に,正定値行列全体のなす集合である正凸錐に注目して研究を行っている.行列の平均は正定値行列を二つ選ぶとその組に対して何らかの正定値行列を対応させるような二変数写像のうち,いくつかの公理を満たすものである.算術平均や幾何平均は典型的な例である.ジャイロ群は群の公理のうち結合法則を弱めることで定義される代数構造であり,相対論における速度やポアンカレ円板の幾何学に関連する.正凸錐上で幾何平均はあるジャイロ可換ジャイロ群の代数的中点と一致することが知られており,また一方で,算術平均や調和平均などいくつかの平均はそれぞれある半群の代数的中点として記述されることが分かっている.この結果を受け,他の様々な平均について,どのような平均であればジャイロ群(もしくは半群)の代数的中点として記述できるかを調べることが本研究課題の目的の一部である.行列の平均は行列単調関数を用いて表現することができることが知られている.当該年度は,この単調関数に注目し研究を行った.その結果,代数的中点として記述できる平均について,その代数構造の性質が,平均に対応する単調関数の性質として表れることが分かった.特に,平均がジャイロ群の代数的中点として記述できるための簡単な必要条件を単調関数の性質で与えることができた.また,その結果,いくつかの具体的な平均について,ジャイロ可換ジャイロ群の代数的中点として記述できないことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平均がジャイロ群の代数的中点として記述できるための簡単な必要条件を単調関数の性質で与えることができ,またその結果として,いくつかの具体的な平均がジャイロ可換ジャイロ群の代数的中点として記述できないことが分かったことは一定の成果であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き平均がジャイロ群の代数的中点として記述できるための条件(必要条件・十分条件・必要十分条件)に付いてより詳しく研究を進めていく.特に,単調関数の性質を用いた必要十分条件が得られないか考察したい.また同様に,半群に関連する平均についても単調関数を用いた評価ができないか考察する.
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