研究課題/領域番号 |
22K03335
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤解 和也 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (30260558)
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研究分担者 |
石崎 克也 放送大学, 教養学部, 教授 (60202991)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ネバンリンナ理論 / 値分布論 / 超越有理型函数 / 除外値問題 / 代数的差分方程式 / 二項級数展開 / ディオファントス近似 / 連分数展開 / 常微分方程式 / 差分方程式 / 指数多項式 / 有理型函数 / 零点分布 / ベキ級数 / Nevanlinna理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題研究は様々な形で与えられる級数を対象に、それらが複素平面全体上で収束するときに得られる複素一変数の有理型函数がもつ零点について考察する。1960年代にR. Nevanlinnaらによって創始された値分布に関する理論は近年特に差分的な観点での改良が目覚ましい。本研究では、シフト作用素を用いた特別な解析接続の反復過程に対して対象となる有理型函数の挙動を差分方程式の大域解という視点で観察し、上記の評価手法を援用することで級数の零点分布に関する評価に繋げることを目標とする。最終的には、得られた成果に代数的な解釈を与え、それを整数論に於ける類似した評価の可能性への知見に繋げることを目指す。
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研究実績の概要 |
主たる研究対象は2階差分方程式に関する柳原予想の解決に向けた考察であった。この予想は1982年にMalmquist型差分方程式 y(x+1)=R(x,y(x)), R(x,y)は2変数多項式, の大域的な有理型函数解の存在とその値分布論的な評価の高階類似を得る過程で提示された。複素力学系に関連する手法を用いた興味深い研究がなされているが、Painleve型の方程式と少し形が異なっているため余り注目されていなかったと思われる。R.G. HalburdとR. Korhonenはy(x+1)+y(x-1)=R(x.y(x))に位数有限の超越的有理型函数解が存在すれば、この方程式が線形や差分Riccati方程式以外に帰着し得る方程式を洗い出し、そこに差分の意味でのPainleve性をもつ方程式が含まれることを示している。一方、柳原予想の対象は上方シフト y(x+j)の線形結合を左辺に置いた代数的な差分方程式で、位数有限な有理型函数解をもつこととある差分Riccai方程式と共通な解をもつことが同値であると予想している。解の存在性の導出が主眼であるため、方程式はR(x,y)=R(y)の時に制限し非定数解を対象にする。本研究課題では多様な級数表示に関する値分布論的な評価を得ることが目標の一つであり、今年度はべき級数と微分方程式との関係性を二項級数と差分方程式との関係性に焼き直すことために考察を進めた。Ablowitz-Halburd-Herbstによる特異点の囲い込みと値分布論的な評価(2000)をはじめPainleve型差分方程式に関する函数論的な研究成果とも対比させながら、ある1つの形を除いて上記予想が正しいことを確認することができた。残されている形では反例が存在すると考える例を構成できたと考えているが、現在最終的に確認を行っている最中である。この他、値分布理論的な議論が可能な関連分野においてもシフト作用素を適用して級数評価を得るための議論を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究業績の項で述べたように、目指す予想の解決にはどうしても解明しなければならない対象が一つ残っている。当該年度の業績を確保するべく部分的な形での成果発表も考えたが、少しずつではあるが日々の考察が前進し、あと少しで解決に手が届くと考えられたことから今年度中の出版・口頭発表を断念した。現在、完全解決に目途が立って論文原稿を加筆修正しており、本研究課題の遂行に於いてこの遅れは致命的なものではないと信じる。また、関連分野における知識の習得を進める過程で、個人的に非常に興味深い発想を得、併せてそれらが本研究課題に於いて意味を持つと考えたことから、実験的な計算や素朴な予想を掲げながら考察を進めたことも進捗状況の遅れにつながったとの思いは否めない。これらの考察の多くが実際には既に知られた結果であったことには正直落胆し、本研究遂行上で大きな回り道となったと反省はしている。しかしながら、この先に本研究課題に意義をもつと信じる対象の存在を、特に現在までの進捗の自然な延長線上に見出すことができている。この方向性を信じ、ただ進捗の速度に留意しながら研究を継続していく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の前半は2階の代数的autonomous差分方程式に関する柳原二郎の予想解決に重点的に取り組む。その考察を発展させて、超越整函数の二項級数展開に関する値分布論的な評価の導出を目指す。 整函数あるいは複素平面上で定義された有理型函数のうち、値分布論における評価式、特に第二主要定理として知られている除外値に関する不等式に於いて極値的な挙動を示す三角函数、楕円函数を極小曲面のGauss写像の除外値評価に関連付けることを試みる。これらが種数が1以下のFermat曲線の一意化を与ていることと適切に関連付けて更なる発展を試みたいと考えている。 差分方程式の整函数解について適切な級数表示を与え、べき級数の場合と同様に係数による増大度評価を得て、それらの関係を明示する「辞書」が存在するか否かを知るための情報を収集する。 また、超離散の意味での値分布理論や関数方程式、級数表示についても複素解析的な対応物との比較を通して、特別な数列についての漸近的な評価式を導出するべく実験的な考察を継続する。 これらの知見を本研究期間最終の令和7年度に総合できるように研究分担者の石崎克也氏とR. Korhonen氏(東フィンランド大学)と緊密に連携して遂行していく。
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