研究課題/領域番号 |
22K03336
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 大典 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00647323)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ランダムウォーク |
研究開始時の研究の概要 |
一様全域木は統計物理に起源を持つ臨界確率モデルである。パーコレーションやイジング模型とある意味で同じクラスに属するランダムなクラスターモデルとして認識されている。パーコレーションやイジング模型に対しては、臨界点での解析が非常に困難である一方で、一様全域木は数学的に厳密に解析を進めることができるという利点がある。本研究では、その利点を最大限に活かして、数学的にも物理的にも最も興味がある3次元一様全域木の研究を進めていく。
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研究実績の概要 |
私の指導する学生である渡辺聡美氏との共同研究において、3次元一様スパニングツリー上のランダムウォークの熱核に対する精密な評価を行った。得られた結果とその背景に関して詳しく説明する。3次元一様スパニングツリー上のランダムウォークの研究に関しては、Angel氏、Croydon氏、Hernadez-Torres氏らとの共同研究において、スペクトル次元の値が3次元ループ除去ランダムウォークの成長指数を用いて与えられている状況であった。しかしながら、熱核がリーディングオーダーの周りで振動しているのか否かは不明な状態であり、それを調べるには3次元一様スパニングツリーのより詳細な構造を理解する必要があった。こうした状況の中、渡辺氏との共同研究で熱核が実際に振動していることを示すことができた。こうした熱核の振動現象はランダムグラフ上のランダムウォークに対してしばしば観察される現象であり、Galton-Watson木や2次元一様スパニングツリーに関しては既に振動することが証明されていた。いかなるランダムグラフに対して、熱核が振動するか否かを調べる問題は興味深い未解決問題として残されたままである。また、ツリー以外のランダムグラフであって、同様の振動現象を引き起こす例を挙げることも今後の課題である。高次元における臨界パーコレーションクラスターに対しては、スペクトル次元も求められており、恐らく熱核も振動するのではないかと考えているが、まだその証明には至っていない。これもまた今後の課題といえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年の研究により、3次元一様スパニングツリーの理解は進んでいる一方で、依然として扱いにくい対象であることもまた事実である。そうした中、熱核の振動まで証明できたのは意味がある進展と言える。また、この研究成果は、3次元一様スパニングツリー上のランダムウォークのより精緻な性質を調べる動機となるのではないかと期待している。たとえば、off-diagonalな熱核の評価に関しては現在のところ何の評価も得られていないが、今後本研究に続く形で研究が進むことを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
3次元一様スパニングツリーに対して、off-diagonalな熱核評価を与えることを試みる。2次元一様スパニングツリーに対してはBarlow氏、Croydon氏、Kumagai氏らの研究によって、off-diagonalな熱核評価が与えられているので、そこでの手法を3次元の場合に適用できるか考察する。また、高次元における臨界パーコレーションクラスター上のランダムウォークに関して同様の精密な評価が行えるかどうかも検討したい。
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