研究課題/領域番号 |
22K03337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三町 勝久 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 教授 (40211594)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 超幾何函数 / 複素解析的線形微分方程式 / 接続問題 / モノドロミー表現 / Heckman-Opdamの超幾何函数 / ねじれホモロジー / 複素積分 / Selberg型積分 / 超幾何関数 / 複素解析的微分方程式 / 交叉数 / ねじれ(コ)ホモロジー |
研究開始時の研究の概要 |
複素解析的線形微分方程式論において接続問題が解けている例が非常に少ないことを踏まえ,接続問題が解ける例の多くを発見・蓄積・整理し,可積分な偏微分方程式系の解の大域的研究の発展の礎を作ることを目的とする.そのため,Appell, Lauricellaの超幾何函数などの古典的多変数超幾何函数と共形ブロック・Heckman-Opdamの超幾何函数などの現代的多変数超幾何函数とを総合的・俯瞰的に考察しながら,これまでに代表者が開発してきた,ねじれ(コ)ホモロジーの交叉理論の応用法と,多重積分をガンマ函数を用いて表示するための(代数幾何的)発見手順とを組み合わせることを計画している.
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研究実績の概要 |
複素解析的線形微分方程式論における解の接続問題が解けている例は一変数の場合ですら非常に少ない.それを踏まえ,Appell, Lauricellaらによる古典的多変数超幾何函数と共形場理論のKnizhnik-Zamolodchikov方程式やDotsenko-Fateev方程式の解やHeckman-Opdamの超幾何函数などの現代的多変数超幾何函数を総合的・俯瞰的に考察することによって,一般のn変数で解ける接続問題の例の多くを発見・蓄積・整理し,次の段階へ発展させることが本研究の目的である.これについての本年度の研究実績は次の通り.
(1) Dotsenko-Fateev方程式に付随するモノドロミー表現をねじれホモロジー上に構成し,その具体的表示をもとにして表現が既約となるための条件を決定した.得られた条件は,被積分函数の特異性(パラメータに対する共鳴条件)を起源にもつもので尽きないという点で,全く新しいものであった.(2) Slaterの${}_{2r}\psi_{2r}$-変換公式を複素積分に付随するサイクルの関係式という視点で再考察することにより別証明を与えたが,さらに,それらの多変数化を目指す計算を進めた.(3) Appellの$E_1$方程式に付随する接続問題について満足のいく結果が得られたことはすでに報告済みであるが,結果をまとめた論文の完成には未だ至っていない.200頁ほどの原稿がほぼ最終段階に達したところで停滞している.これは,思いのほか証明法を磨き上げることに(局所的にも大域的にも)時間を要しているからであるが,理解を深めるためには仕方ないことかもしれないと思っている.(4) Heckman-Opdamの超幾何函数の積分表示を構成するための計算に着手した.同じく,CherednikのアフィンKZ方程式の積分表示解の研究に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べた通り,ほぼ予定通りの研究成果を得ており,次年度以降の研究も順調に推進できるものと考えている.より具体的には,次の通り.
(1) Dotsenko-Fateev方程式に付随するモノドロミー表現の既約性に関する論文がようやく完成し,雑誌Commun. Math. Phys. に投稿し,受理・出版された.主な部分は何年も前から出来ていたが,最後の部分がなかなか詰め切れず,かなりの時間を要してしまった.しかし,その分,完成度の高い論文を書くことが出来て,結果的には良かったと思っている.(2) Slaterの${}_{2r}\psi_{2r}$-変換公式の別証明を論文に纏め,雑誌Ramanujan J.に投稿し,受理・出版された.(3) Appellの$E_1$方程式に関する接続問題についての論文は未だ完成に至っていない.早期の完成を目指し,鋭意努力中である.(4) $A_n$型Heckman-Opdamの超幾何函数の積分表示を構成するため,以前(Duke Math J., 1996)求めた量子KZ方程式の積分表示解の古典極限を詳細に検討し,さらに野海正俊氏とともに行った議論(Tohoku Math. J., 1997)をヒントに,計算を進めた.その結果,かなりのことが分かってきた.また,CherednikのアフィンKZ方程式の積分表示解を構成する試みについても,同様である.
研究費運用に関しては,コロナ禍が収束しきっていなかったこともあり出張を控えざるを得ず,したがって,残念ながら,計画通りの支出は行えなかったが,次年度以降は継続した研究費運用により,有効な成果が期待できるものと思っている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) Appellの$E_1$方程式に付随する接続問題についての論文を完成させて早々に雑誌に投稿したい.(2) Heckman-Opdamの超幾何函数の積分表示を構成する問題の第一歩として,Jack方程式をみたす積分(積分域は任意のサイクル上とする)を特定したい.アフィンKZ方程式の積分表示解についても同様である.(3) Lauricellaの$E_D$方程式の解の接続問題について,Appellの$E_1$方程式の場合の知見を参考にして研究を進めたい.(4) Lauricellaの$E_A$方程式に関する接続問題については,サイクルの扱いについての不満足な点を解決すべく研究を行う.(5) Appellの$F_4$函数のサイクルについては,数年前にある程度の理解が出来たのだが,その定式化の際のサイクルの扱いには,まだ,不満足な点,理解不足な点がある.引き続き,この理解に向けた努力を行いたい.関連する接続問題も考えたい.(6) Ramanujanの${}_1\psi_1$-和公式,Slaterの${}_{2r}\psi_{2r}$-変換公式の研究を$A_n$型多変数$q$超幾何函数の和公式などの理解に発展させたい.(7)さまざまな場合のSelberg型積分(Rains, Rosengren, Schlosser, Warnaarらによる $q$の場合をも含む)に付随する(コ)ホモロジーの生成元または基底についての系統的な理解を進めたい.(8) 蛭子・原岡・金子・落合・佐々木・吉田が発見した3変数のFucks型微分方程式(Osaka J. Math.,2023)に付随する接続問題を考えたい.
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