研究課題/領域番号 |
22K03346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
洞 彰人 北海道大学, 理学研究院, 教授 (10212200)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 漸近的表現論 / 分岐グラフ / スケール極限 / ヤング図形 / 極限形状 / 対称群のスピン表現 |
研究開始時の研究の概要 |
漸近的表現論を旗印にして、確率論と表現論の融合的な研究を行う。表現の分岐則という良質の枝分れ構造が紡ぎだすランダムな現象の理解を目標にする。群論的な意味をもつヤング図形の集団や、群の帰納的な増大列に付随する分岐グラフを主な舞台にする。主要なテーマとして、ランダムなヤング図形の種々のスケール極限として現れるマクロな極限形状の時間発展モデルと、分岐グラフ上の調和関数とマルチン境界の研究を挙げる。表現の漸近挙動と確率論における極限定理を表裏一体にとらえて双方向的な研究を進める。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、群の表現の制限と誘導の分岐律を大域的に記述する分岐グラフを舞台にして、サイズが大きくなる群の表現の漸近挙動の解析や、巨大な群の表現にまつわる調和解析を展開し、新しい現象を見出すことである。具体的には、マルコフ連鎖を主とした確率モデルの極限定理の枠組を活用した詳細な計算を行い、漸近的表現論の1つの相を浮き彫りにすることを目指す。今年度にもっとも注力したのは、表現の漸近挙動としてのヤング図形の極限形状とその変移に関わる問題の考察である。極限形状とは、ランダムなヤング図形や点配置から、大数の法則などの確率論の極限定理を通してマクロな形状や模様が抽出される現象の1つである。本研究では、ランダムネスと表現の既約分解をミクロな視点の性質として結びつけること、そしてマクロな時間パラメータを含む動的なモデルを扱うことに特色があり、表現論と確率論が深く交錯する場としての認識をもっている。今年度は、ヤング図形集団の統計的な性格が対称群のスピン表現に由来するようなモデルを主として扱った。スピン表現は線形表現に劣らず重要な数学的概念であるが、同一の群であっても、線形表現とスピン表現では多くの異なる様相が見られる。今年度の本研究では、対称群の通常の線形表現に基づくこれまでの研究過程を大幅に再検討し、新たな知見と方法を加えて、ヤング図形のスピン極限形状の時間発展に関する結果を得た。対称群のスピン表現自身に関しても、ユツィス・マーフィー元のスピン版についての興味深い性質を含んでいる。これらに関する研究の現状のあらましを国内で開催された研究集会で発表したほか、現在のところ研究論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として、研究の中身については、おおむね予定どおりに順調に進展していると言えよう。表現論と確率論が深く交錯する融合的な研究であることを認識しており、その大方針に沿って、着実な進歩が得られたと考える。 一方、研究経費の使用の面から見ると、感染症の社会的影響がいまだ強く残っていた年度であり、研究打合せ等のための旅費の経費の使用は予定を大幅に下回った。しかし、それによって研究の遂行に致命的な影響が出ないように心がけた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究計画調書と交付申請書に記載した要領で、予定どおり進めていく。巨大な群の作用がうみだす現象を題材にして、表現論と確率論の融合的な研究を企図する。具体的な確率統計モデルに立脚して、詳細な解析と計算を行うという方針を保っていく。スピン表現については未開拓の領域が多く、確率論の極限定理との関わりでも、今後の研究を待つ部分が大きい。本研究では、今後もスピン表現の分岐律の漸近挙動に着目した一連の研究を推進する。
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