研究課題/領域番号 |
22K03356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
増本 誠 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (50173761)
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研究分担者 |
柴 雅和 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 名誉教授 (70025469)
中村 豪 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50319208)
増本 周平 愛知工業大学, 工学部, 講師 (30803861)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | リーマン面 / 等角写像 / タイヒミュラー空間 / 二次微分 / 測度付き葉層構造 / 極値的長さ / 圏 / 正則写像 / 接続 |
研究開始時の研究の概要 |
リーマン面は正則関数(複素微分可能な複素関数)の自然な定義域であり,正則写像は正則関数をリーマン面の場合に拡張した概念である。実関数の場合と異なり,正則写像ではごく僅かな解析学的・幾何学的条件が強い条件を課したことに相当する現象が見られる。この現象を,リーマン面の特徴である把手の存在を意識して研究する。把手を保つ正則写像の存在を,同様の性質を有する等角写像(1対1の正則写像)の存在に結びつける独自の手法を展開することにより研究を深化させる。
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研究実績の概要 |
正種数gの印付き有限開リーマン面Rを等角に埋め込ませる種数gの印付き閉リーマン面の全体をMとする。Mは種数gのタイヒミュラー空間Tの部分集合であり,Rが解析的有限でなければTの閉球と同相である。Mの各元Sに対し,RからSの中への等角写像の全体をC(S)と表す。 R上の正則二次微分でRの境界上正かつ境界長さ条件を満足するもの全体をAと書く。Aの各元φは,溶接接続という手法を通してRからある印付き閉リーマン面Sの中への等角写像を誘導する。そのようにして得られるSの全体をM(φ)と表す。すると,AのすべてのφにわたるM(φ)の合併集合はMの境界∂Mに一致する。さらに,M(φ)の任意の元Sに対し,C(S)のどの元もφの溶接接続から得られる等角写像である。 さて,gが1のとき,Aのすべての元φに対しどのM(φ)もただひとつの元からなり,M(φ)の各元Sに対してC(S)はただひとつの元からなることが知られていた。ところが,gが3以上のとき,Aの中には,M(φ)が非可算個の元を持つと同時にM(φ)のすべての元Sに対してC(S)はただひとつの元からなるような二次微分φが必ず存在することが示された。gが2に等しいとき,あるRに対して同様の性質をもつφの存在を示すことができたが,すべてのRがそのようなφを持つかは未解決である。いずれの場合でも,零点が特殊な分布をしているφの存在が証明の鍵を握る。種数1の閉リーマン面上の正則二次微分は零点を持たないので,gが1に等しい場合の特殊性が浮かび上がる。 Aの各元は種数gの向きづけられた閉曲面上の測度付き葉層構造を経由してT上の極値的長さ関数E(φ)を誘導する。E(φ)のM上の最大値をμ(φ)とすると,∂Mは等高面族E(φ)=μ(φ)の包絡面であり,各等高面と∂Mの共通部分がM(φ)に一致するので,前段落の結果からE(φ)のM上の挙動が知られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
与えられた有限開リーマン面を等角に埋め込ませるより高い種数の閉リーマン面の全体の幾何学的性質について満足できる結果が得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
研究したい問題は二つある。一つは,与えられた開リーマン面の有限性条件を,単に種数が有限であるという条件に緩和した場合も同様の結果が成立するか,という問題である。種数が1の場合,肯定的な結果が知られている。種数が2以上の場合にも同様であることを予想しているが,函数論的な手法が必要となるであろう。 二つ目はを埋め込み先のリーマン面を与えられた開リーマン面より高い種数を持つ閉リーマン面に置き換えた場合に,それらの閉リーマン面の全体がタイヒミュラー空間の中でどのような集合を構成しているかを調べる問題である。これについては先行研究は存在せず,新しい手法を開発する必要に迫られるであろう。
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