研究課題/領域番号 |
22K03369
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
中島 主恵 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (10318800)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 反応拡散方程式 / 特異摂動問題 / 遺伝子頻度 / 遷移層 / 反応拡散系 |
研究開始時の研究の概要 |
不均質環境での遺伝子頻度の変化を表す非線形反応拡散方程式を研究し,不均質性と定常解の存在,一意性,多重度,漸近安定性との関連を解明する.さらに定常遷移層,定常スパイクの位置,形状を解析して不均質性と定常解の存在,一意性,多重度,漸近安定性を研究する.詳しくは,平衡解の一意性が成立するための不均質性の数学的特徴づけを行い,不均質環境が遺伝子に与える影響のメカニズムを解明する.また方程式に積分平均の項で表されるパンミクシーの効果を加えた場合、拡散,不均質性,積分平均の3つの要素が定常遷移層に与える影響を解明する.
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研究実績の概要 |
研究論文Bifurcation structure of an indefinite nonlinear diffusion problem in population geneticsではここ数年に引き続き上記の遺伝子頻度モデルを扱う.昨年度までの研究では求める解が遺伝子頻度であるため0から1までの解が興味の対象であった.しかし研究を進めるにしたがって0と1の間の定常解の全体像を明らかにするためには自明定常解 u=1からの非定数定常解の分岐構造を調べることが不可欠になることに気づいた.$u=1$からの分岐問題の重要性はFeltrin-Sovrano,Izuharaなどの数値実験の結果などからも裏付けられる.このような生物学的な意義に加え,数学的な意義は次のようである.非線形項が符号を変えるようなロジスティックタイプの方程式の正値定常解の分岐構造を研究は1970年代から国内外でさかんに行われてきた.非線形項が符号を変えない場合には数えきれないほどの先行研究があるが,非線形項が符号を変える場合には変えない場合に比べて国内外でも研究が始まったばかりと言ってよく,その解の挙動は数学的にも複雑で興味深い. 同論文では以下のことが証明された.定常解 $u$ が$n$回 1を横切るとき,モード $n$ の解と呼ぶことにする.拡散係数を小さくしていくと定数定常解 $u=1$ からモード1の解,モード2の解・・・が順に分岐することが示される.この分岐の枝の解はモードを変えず,大域的に存在する. モード n の解 u は(境界を含めると)n+2個の極点を持ち,u が1を横切る点と極点は交互に現れる.さらに拡散係数が十分小さいときには,uが1を横切る点($u-1$ の零点)は境界点,あるいは非線形項が符号を変える点の付近のみに現れることが証明され,モード n の解の詳細な形状が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1以上の定常解はさまざまな形状を持つが、想定される形状の解をほぼすべて構成することに上記の論文において成功したから。また0,1の間の定常解についてLou-Nagylakiの予想である「環境変数の積分が負であるとき、定常解はちょうど2個存在する」という事実を1次元の場合に証明する着想を得たから。
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今後の研究の推進方策 |
集団遺伝学においてNagylaki(1975)が導入した遺伝子頻度の変化を記述するモデルを考える.この方程式の解は遺伝子頻度を表す確率変数なので0と1の間に値をとる.本方程式の非定数定常解の存在や一意性について古くから研究が進められ,代表的なものには Fleming(1975), Brown-Hess(1990)などがある.本研究では Fleming, Brown-Hessなど既存の結果が未解決の部分を考える.すなわち非線形項は f(u)=u^2(1-u) とし,環境変数 g(x)は符号を変える場合を扱う.この場合(E)はFleming や Brown-Hess が扱った場合とは異なり,定数定常解の一意性は導き出せない.この問題にたいし,Lou-Nagylaki (2002)は次の予想をしている. 予想1. 環境変数の積分が非負の条件のもと,方程式は0と1の間に一意の非自明(非定数)定常解をもつ.この定常解は漸近安定である 予想2. 環境変数の積分が負の条件のもと,方程式は0と1の間に非自明(非定数)定常解を丁度2個もつ.1つは漸近安定な定常解であり,もう1つは不安定な定常解である
申請者はここ10年ほどこの問題に取り組み、環境変数がある条件を満たすとき予想1が実現されることを示してきた(2010、2016、2018)。しかし一方でこの予想1の限界に気づき、申請者らの3つの研究(2020)により非定数定常解の予想1の一意性は否定された.すでに予想2が必ずしも実現されないことは確かめられているが、最近1次元の予想2を実現するg(x)の条件について着想をえたので、その数学的に厳密な証明を完成させる。
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