研究課題/領域番号 |
22K03380
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 和永 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20188288)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 変分問題 / 非局所問題 / 特異摂動問題 / 変形理論 / 定在波 / 非線形楕円型方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
数理物理モデルに現れる重要な問題には, 非線形 Choquard 方程式等の非局所問題が現れ, 非常に重要である. 本研究では変分的手法により数理物理における半古典極限に対応する特異摂動問題の研究を非局所問題を対象として行う. L2-制限問題 (mass-constraint problem) を重視し, 勾配流理論の改良, 新たなるミニマックス法の開発等を通じて凝集解等の存在結果の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
非局所方程式に対する特異摂動問題および非線形シュレディンガー方程式に対する L2-制限下での定在波解の存在問題に関して成果が得られた. 特異摂動問題に関しては,昨年度までに整備してきた R^N と H^1(R^N) の積空間における変形理論 (deformation theory) をさらに発展させ,非局所問題を扱った.特に非線形項に対する非常に一般的な条件の下で非線形 Choquard 方程式を扱い,Mountain Pass 臨界点,極大点等のポテンシャル関数 V(x) の臨界点に凝集する特異摂動解の存在証明に成功した.極大点以外での凝集解の存在は極限方程式の解の一意性,非退化性の仮定の下でのみ知られていたに過ぎない (解の一意性,非退化性は空間次元 3, alpha が 2,非線形項が u^3 のときにのみ知られている).この研究は Cingolani 氏との共同研究により行われた.
L2-制限下での非線形シュレディンガー方程式の研究はいわゆる L2-臨界指数 1+4/N をもつ方程式に対して定在波 (standing wave) の存在を議論した.定在波の存在問題は主に L2-優臨界,L2-劣臨界の従来議論され,L2-臨界の場合は解空間の非コンパクト性,解の存在は非常に限られた mass に対してのみ期待できるという難しさのため従来ほとんど扱われていなかった.ここでは平田と共に導入した問題の Lagrange formulation を用いた定式化を行い,非コンパクトリーマン多様体上の閉測地線を求めるために開発したミニマックス法等を変形し適用することにより存在を示した.ここで開発された方法,特に正値解の存在を得るための錐状領域の近傍での解析手法は他の問題等においても発展が見込まれる.この研究は Cingolani 氏,Gallo 氏,生駒氏と共に行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに特異摂動問題に対する変形理論を中心に理論を発展させることに成功しているが,本年度は非局所問題に対しても適用可能な形にさらに発展させることができた.特に非線形 Choquard 方程式に対して非常に一般的な設定の下で,ポテンシャル関数の極大点,ミニマックス法による特徴付けをもつ臨界点に凝集する特異摂動解の存在証明に成功している.このような特異摂動解の存在は極限問題に対するある種の非退化条件の下においてのみ知られていた.ここでは非退化性に頼らずに解を構成できるよい例を与えている. また L2-制限下での定在波の存在問題についても,今までほとんど研究が進んでいなかった L2-臨界性をもつ非線形シュレディンガー方程式を扱った.典型例としては空間次元が 2 のときの 3 次の非線形項 u^3 があげられる.非常に基本的な問題であるが,解集合の非コンパクト性等の難しさから今まで定在波の存在はあまり研究されてこなかった.ここでは問題の Lagrange formulation に対するミニマックス法を見いだし,コンパクト性を Palais-Smale-Pohozaev-Cerami 列を解析することにより見いだし,定在波の存在定理を得ている.ここで得られた存在定理はある意味最良のものであり,条件を緩めた場合,非存在定理が成立することも示している.この成果は次年度以降に計画している L2-制限下での特異摂動問題の研究にも役立つものである.
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今後の研究の推進方策 |
次の 3 つの問題を中心に研究を進める. (1) L2-制限下での特異摂動問題.昨年度-本年度に開発した特異摂動問題に対する変形理論を L2-制限問題に対する Lagrange formulation に発展させるアプローチを行う. (2) 特異摂動問題に対する multi-peak をもつ解の存在問題.非局所問題に関しては孤立波間の相互作用はまだあまり解析されていない.相互作用の解析,評価から始め,一カ所に複数個の peak が凝集する clustering 解の構成を目指す. (3) multi-scale をもつ問題の解析.double power をもつ非線形シュレディンガー方程式に代表される 3 個以上の scale 不変性を持つ問題の解析が最近盛んに行われている.ここでは局所的なべき関数および Choquard 型の非局所非線形性を合わせもつ問題に対してその複雑な解構造の解析を行う.
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