研究課題/領域番号 |
22K03391
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
曽我 幸平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80620559)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 計算機流体力学 / 二相流体 / 等高面法 / Hamilton-Jacobi方程式 / 粘性解 / 線形輸送方程式 / Navier-Stokes方程式 / 非一様非圧縮性流体 / 弱解 / 有限差分法 / 流体力学 / 数値解析 / KAM理論 |
研究開始時の研究の概要 |
二相流体の標準的な数学解析では自由境界を固定境界に変換することで間接的に問題を解く.一方,数値解析では自由境界の時間発展を追跡することで直接的に問題を解く.本研究では,有限差分法に基づく新たな直接解法を提案して解の構成的存在証明を行う. 古典KAM理論は,Hamilton力学系の相空間の性質をHamilton-Jacobi方程式の古典解と関係付ける理論ともみなせるが,古典解は常には存在しないため,一般に相空間において除外される部分が生じる.本研究では,Hamilton-Jacobi方程式の粘性解理論とKAM逐次近似の手法を融合させることで除外される部分の解析方法を開発する.
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研究実績の概要 |
流体運動のLagrange記述では、流体を仮想的な粒子の集団とみなして初期位置でタグを付け、その軌跡を追跡する写像を考える。 この写像は、Euler記述による流体の速度場が定める常微分方程式のflow mapに他ならない。流体運動における単純な移流現象は、この写像またはEuler記述の速度場が定める線形輸送方程式によって解析可能である。単純な移流現象の典型的な例として、水/油などの二相流体の自由境界運動がある。自由境界を追跡する方法は種々知られているが、本研究では境界面を等高面関数のゼロ等高面として記述する「等高面法」に注目した。等高面関数は線形輸送方程式の解となる。 「等高面法」は計算機流体力学において頻繁に使われている。計算機流体力学の最近の成果として、等高面関数の変化率をゼロ等高面上で安定化させるために、線形輸送方程式ではなく、元々のゼロ等高面を変えないような適当な非線型項を加えた偏微分方程式を利用する方法が知られている。この偏微分方程式は一階完全非線型なHamilton-Jacobi方程式になるため、その数学解析は自明ではない。当該年度の研究では、粘性解理論を駆使することによって、この偏微分方程式の粘性解クラスでの適切性とゼロ等高面の不変性を証明した。さらに特性曲線の方法を駆使することで、粘性解のゼロ等高面近傍における正則性(滑らかさと1階微分の先見的有界性)を証明した。 この結果は、計算機流体力学で使用されている手法の数学的正当性を担保するものである。また、粘性解の局所正則性の問題は一般に非自明なため、偏微分方程式論の観点からも意義のある成果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機流体力学で広く使われている手法の数学的正当性を示す結果を得た。本研究課題の主要な目的の1つである「流体力学における数値解析的手法の数学解析」に沿う成果が得られたことから、研究は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
計算機流体力学において、修正された線形輸送方程式を用いた等高面法がいくつか知られいるが、数学解析がなされていないものがまだ残っている。当該年度の研究で得られたアイデア・結果を応用することによって、等高面法の数学解析を進める。
当該年度の研究で示した粘性解の局所正則性の議論は、等高面法に由来するHamilton-Jacobi方程式意外にも適用可能であると期待される。この点に関して研究を進め、粘性解理論とHamilton力学系に関する新たな理論を展開する。
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