研究課題/領域番号 |
22K03396
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
|
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
柳 青 沖縄科学技術大学院大学, 幾何学的偏微分方程式ユニット, 准教授 (70753771)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 距離空間 / アイコナール方程式 / 粘性解 / ハミルトン・ヤコビ方程式 / 微分ゲーム / 非線形偏微分方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,無限次元ノルム空間を含めた一般の距離空間における完全非線形偏微分方程式を研究の対象とし,解の定義から着手し,空間の次元と構造に依存しない解析理論を確立する.ユークリッド空間の場合と比べ,距離空間に関する研究を行う際に特有の困難がある.特に,粘性解理論を含めた弱解の理論によく用いられた滑らかな試験関数の存在が一般的には期待できなくて,代用できる概念を構成しなければいけない.これらの難題を克服する効果的な方法の確立に取り組み,偏微分方程式論の斬新な領域を開拓することを目指す.
|
研究実績の概要 |
一般の測度距離空間において,非有界で不連続な非斉次項を持つアイコナール方程式について研究した.ユークリッド空間上の不連続なハミルトン・ヤコビ方程式の粘性解理論に関しては,多くの先行研究があるが,方程式の有界性が仮定される場合がほとんどであった.本研究では,非斉次項が変数によって無限大への発散を許す場合に着目し,一般の距離空間において方程式の解の概念及びそれに基づいたディリクレ境界値問題のモンジュ解の一意存在性理論を確立した.我々の手法の鍵は,空間内の曲線に沿った線積分を用いて,非斉次項を組み込んだ新たな距離を構築することである.この新たな距離に取り替えることにより,方程式を標準的なアイコナール方程式に変換することが可能となった.このように得られた解の連続性は一般には期待できないが,空間及び非斉次項の正則性に関する仮定の下で,解のヘルダー連続性を示せた.これらの研究結果をまとめた論文は現在投稿準備中である.
関連の課題として,距離空間におけるハミルトン・ヤコビ方程式と微分ゲームの関連性も明らかにした.空間内の曲線を制御として加えることにより,ユークリッド空間で広く知られるゲーム理論的解釈を一般の距離空間まで拡張することに成功した.この成果に関する論文は,国際ジャーナルMinimax Theory Appl.に掲載された.アイコナール方程式は,無限大ラプラシアンの固有値問題に関する研究にも応用がある.私たちはモンジュ解の概念を取り入れ,一般の距離空間における無限大ラプラシアンの主固有値と固有関数の存在を証明し,既存の研究結果を一般化した.この結果をまとめた論文は,国際誌Adv. Nonlinear Stud.に掲載された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標とするアイコナール方程式に関する研究を計画通り達成し,一般の距離空間上の偏微分方程式論を進展させた.同時に,距離空間におけるゲーム理論や固有値問題との関連性についてもより深い理解を得ることができた.本研究は予定通り進展し,順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は主に定常問題に焦点を当ててきたが,今後は時間依存のハミルトン・ヤコビ方程式の粘性解理論に取り組み,従来の定義や手法を簡素化することを目指す.ハミルトン・ヤコビ方程式の解の正則性や特異性についても,一般の距離空間においてどのように表現するのかが重要な課題である.特に特異性の伝播及びそれに関する方程式の幾何学的性質について今後重点的に研究する.また,最適輸送や最適制御などの最新の応用や発展にも注目し,距離空間において新たな数理モデルに現れる方程式の解析を試み,既存の解析理論を更に充実させたいと考えている.
|