研究課題/領域番号 |
22K03401
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木原 貴行 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80722701)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 計算可能性理論 / 次数の理論 / 構成的数学 / 実現可能性 / 綜合位相 / 計算可能トポロジー / 実現可能性トポス / 表現空間 / Lawvere-Tierney位相 / Weihrauch次数 / チューリング次数 / 構成的逆数学 / 幾何様相 / エフェクティブ・トポス |
研究開始時の研究の概要 |
数学基礎論において,数学の定理を示すための必要最小限の公理を探る逆数学と呼ばれるプロジェクトがある.本研究課題では,逆数学に対して,トポス理論の概念である幾何様相(Lawvere-Tierney位相)を用いた新たなアプローチを行う.その根幹は《相対実現可能性トポス上の幾何様相全体のなす内的フレーム構造の分析は,一種の逆数学だと思える》という発見に基づく.
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研究実績の概要 |
本年度は,大きく分けて,実現可能性トポス上のLT-位相と次数構造の関連性の研究,表現空間の圏の算術的階層の研究,計算可能トポロジーの研究を行った. 第一に,次数の理論のトポス理論的な研究としては,K. M. Ng氏との共同研究で,実効トポスの実現可能性部分トポス構造に対応するサブチューリング次数の概念を導入した.その次数構造分析の手法を構築し,たとえば,この構造が非モジュラー束をなすことを示した.さらにサブチューリング次数の理論を応用して,構成的数学における形式チャーチ提唱の8つの亜種の強さの分離研究を行った.また,表現空間の圏における表現のジャンプの概念を,実現可能性トポス上のLT-位相(普遍閉包作用素)の言葉で整備した. 第二に,表現空間の圏における算術的階層の研究を行い,特に古典Σ^0_2-完全集合の自然な例たちが,この文脈では多対一同値でないことを明かした.たとえば,古典Σ^0_2-完全問題である,自然数列の収束性判定,有界性判定,グラフの不連結性判定,全順序の非稠密性判定は,表現空間の圏では,多対一還元の真上昇列を与える.同様に,古典Σ^1_1-完全集合の表現空間の圏における分析を行い,半順序の整礎性の多対一次数が半順序の幅に依存することを示した.これにより,自然な決定問題の分類のために表現空間の圏における多対一還元の概念は重要な役割を持つことが期待される. 第三に,計算可能トポロジーに関する結果としては,まず,A. Pauly氏との共同研究で昨年度に得られた表現空間のde Groot双対に関して,綜合位相の観点から再分析し,より一般の圏へとコンパクトT_1性とハウスドルフ性の双対性を拡張した.次に,M. Hoyrup氏とV. Selivanov氏との共同研究において,同相型の次数スペクトルの問題の解決のために,チェックホモロジー群の自明性判定の複雑性の分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に述べたように,今年度も数多くの発見があった.昨年度からの継続的研究としては,計算可能トポロジーにおいては,de Groot双対の研究と,同相型の次数スペクトルの研究の発展があり,これらについても堅実な発展があった.実現可能性トポスのLT-位相の構造研究については,これを応用して,表現空間の圏における表現のジャンプの概念を普遍閉包作用素の言葉で整備した. しかし,計画以上に進展したと考える理由は,今年度からの新規研究にある.特に重要なものは,(1) サブチューリング次数の構造分析と (2) 表現空間における算術的階層である. 前者については,実効トポスの実現可能性部分トポスの構造を分析する道具(サブチューリング次数)を与え,さらに,K. M. Ng氏との共同研究において,数々の強力な証明技術を開発した.これによって実現可能性部分トポスの構造解明が大きく進んだ.また,純粋な構造分析だけでなく,この概念が構成的数学に応用可能であることを明らかにした. 後者については,表現空間の圏における多対一還元の概念が想定以上に重要であることが判明した.古典計算可能性理論では,算術的階層における「自然な」決定問題の複雑性を区別する方法が,ほとんど量化子の数のカウントしかなかった.これに対して,表現空間の圏における多対一還元は,「自然な」決定問題の遥かに精密な分類を与える.これにより,計算可能性理論の広大な研究領域を新たに発見したことが極めて重要である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針としては,まずは実現可能性トポスのLT-位相/部分トポスの構造分析である.特にサブチューリング次数の構造分析をこのまま続け,さらに構成的逆数学への新たな応用を探る.また,今年度,修正実現可能性トポスについても同様の研究を試みたが,まだLT-位相のオラクル的な特徴付けを得られていないので,この研究を完成させることを目指す.
次に,表現空間の圏における多対一還元の広大な研究領域の開拓を進める.Σ^0_2レベルについては大きく開拓が進んだが,Σ^1_1レベルは未完成であり,特に整礎性やWQO性に関わる数多くの未解決問題が残っているので,まずはこれらの問題の解決を目指す.また,Σ^0_3レベルは現時点ではほとんど未開拓であるが,ここの分析手法のアイデアは準備している.特に自然なΣ^0_3-決定問題を収集し,これらの適切な分類理論の構築を目指す.
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