研究課題/領域番号 |
22K03405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
齋藤 正顕 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (90525164)
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研究分担者 |
長谷川 武博 滋賀大学, 教育学系, 教授 (80409614)
西郷 甲矢人 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80615154)
杉山 真吾 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (70821817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | Berry予想 / グラフの増大列 / ベッセル関数 / 格子 / 連続極限 / テータ関数 / 線形符号 / 熱方程式 / グラフの跡公式 / Ihara zeta function / 伊原ゼータ関数 / ラマヌジャングラフ / カスプ形式 / 逆正弦則 / 固有ベクトル / ラプラシアン / 量子エルゴード性 / グラフ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,グラフの増大列の量子カオス的現象を解明する.特に,量子エルゴード的なグラフの増大列について,その隣接固有ベクトルの成分の極限分布が正規分布になるという予想(グラフ版Berry の予想)の厳密な定式化と証明を目指す.実用上良い性質を持つようなグラフの増大列は,「量子エルゴード定理のグラフ類似」をみたすという新たな特徴づけがなされている.この観点から, Ramanujan グラフの無限列や,ランダム正則グラフの無限列の隣接固有ベクトルの挙動を調べる. 併せて, これに関連するグラフや格子上の熱方程式の解の挙動についても研究する.
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研究実績の概要 |
本年度は次の結果を得た。(1)格子上のベッセル関数の和に関するKarlsson-Neuhauser(2006), Chinta-Jorgenson-Karlsson(2010)の等式を指標付きの等式に拡張した。(2)我々の等式の連続極限(空間と時間に関する極限)をとると、指標付きのテータ関数(例えば、Dedekindのエータ関数)の変換公式が得られるという意味で、指標付きテータ関数の離散類似を得た。(3)「剰余環上の線形符号から定義される格子のテータ関数が、アルファベットに対応するテータ関数で表され、アルファベットに対応するテータ関数はcomplete weight enumerator(cwe)に関する MacWilliams の恒等式を満たす」ということの離散的類似(テータ関数をベッセル関数の和で置き換えた定理)を得た。(4)一般の格子上のラプラシアンに関する連続時間の熱方程式が、有界関数を初期条件としてもつとき、一意解を持つことを証明した。また、解は一般化されたベッセル関数と初期条件の畳み込みで表される。(5)(3)と(4)の系として、初期条件が線形符号で与えられる Z^n 上の熱方程式の解を明示的に得た。この場合、熱の分布は「符号の重さ分布多項式」(cwe)で表される。(6)Dedekindのエータ関数の離散類似のベッセル関数の和について、熱方程式の解としての解釈を与えた。結果は次の論文としてまとめ、投稿中である:T. Hasegawa, H. Saigo, S. Saito and S. Sugiyama, Lattice sums of I-Bessel functions, theta functions, linear codes and heat equations, http://arxiv.org/abs/2311.06489
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、主に離散トーラスの増大列(より一般に、格子とその極限)について、熱方程式の解の挙動を調べた。これは本研究の枠組みの中では、カオス的現象が起こらない場合と考えられるが、格子上のベッセル関数の和はテータ関数と類似の性質をもつというKarlsson-Neuhauser(2006), Chinta-Jorgenson-Karlsson(2010)の結果を一般化することができた。本件については、九州大学の研究集会で部分的な結果を報告することができた。また、量子カオス的現象がを起こると考えられている正則木に収束するようなグラフの増大列についても対応するベッセル関数の和を考察する必要があると考えられる点で、今年度得られた結果は本研究課題の進展につながるものである。また関連して1次元3状態の量子ウォークについても応用物理学会で報告することができた。以上の観点から研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
正則木に収束するような正則グラフの増大列について、長さmのnon-backtracking closed path の個数N_m に関連する行列M_mの非自明な部分を表す行列a_mの成分の極限分布や自己相関について調べる。併せて隣接行列の固有関数との関連も調べる。増大列の固有関数を被覆グラフの観点から調べる。またa_mのトレースt_mと関連するグラフの位相的な指数や特殊関数の性質について更に検討する。関連して無限グラフ上の跡公式やゼータ関数を検討する。離散トーラスに関しては、今年度に得られた結果の発展として、線形符号の重さ分布多項式とテータ関数の関係について更に調べる。また格子上の場の理論との関連も検討する。また、ポテンシャルがついた格子上の熱方程式についても検討する。得られた結果を論文にまとめて投稿する。今年度得られたKarlsson-Neuhauser(2006), Chinta-Jorgenson-Karlsson(2010)の結果の拡張(離散的なテータ関数の指標付きの拡張)について、その積分変換で得られるラプラシアンのスペクトラルゼータ関数についても連続極限の対応などを調べる。
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