研究課題/領域番号 |
22K03411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高安 亮紀 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60707743)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 計算機援用証明 / 初期値問題 / 境界値問題 / 零点探索問題 / 簡易ニュートン写像 / 時間大域存在 / 無限次元力学系 / Swift-Hohenberg方程式 / Ohta-Kawasaki方程式 / 発展作用素 / 半群理論 / タイムステッピング / 精度保証付き数値計算 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では流体のモデルであるSwift-Hohenberg方程式、化学反応モデルのKuramoto-Sivashinsky方程式、材料化学のモデルであるジブロック共重合体(diblock copolymer)モデルおよびPhase field crystalモデルなどの時間発展する非線形偏微分方程式の解軌道を厳密に求積する統一的な数値計算法について研究を行う。研究代表者らによる半群理論を用いた計算機援用証明手法を高度に発展させ、無限次元力学系を捉える非摂動的な解析手法を新たに確立する。さらに従来の摂動的な解析手法との効果的な融合により、無限次元力学系の大域的解析にコンピュータを利用する新たな潮流を創り出す。
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研究実績の概要 |
今年度は、昨年度確立した時間発展する非線形偏微分方程式(時間発展方程式)の解軌道を厳密に求積するフレームワークを再度検討し、解の検証に関する定式化を関数方程式の零点探索問題とみなして考えることで、検証理論をより精密にかつ一般的に改良することに成功した。これまで複数の時間区間における局所存在検証はタイムステッピング法を使用していたが、この改良により複数時間区間にわたる解の近似解近傍における一意存在を同時に検証することができるようになった。この結果は本研究の目的である時間発展方程式の厳密な数値求積法が初期値問題だけでなく、時間変数に関する境界値問題にも対応できることを示唆している。具体的には、時間発展方程式の求解を零点探索問題に対する簡易ニュートン作用素の不動点問題として考えると、ある近似作用素の逆作用を発展作用素を用いた定数変化法による解の表記を用いることで各時間区間における存在検証が不要になり、代わりに各時間区間における発展作用素の評価を得ることで、複数時間区間にわたる解が同時に検証可能となった。 さらに今年度はある程度広いクラスの半線形放物型偏微分方程式に対して、解の時間大域存在を厳密な数値求積と解の捕捉領域の数値検証によって実現できた。時間発展方程式の非自明な平衡解と平衡解における固有値の情報を計算機援用証明の方法で明らかにし、平衡解周りの解の捕捉領域(無限次元安定多様体)を数値的に構築することに成功した。捕捉領域内に解の軌道が含まれることを我々の厳密な数値求積法によって示すことで解の時間大域存在が証明される。 これらの研究成果を空間多次元のSwift-Hohenberg方程式およびOhta-Kawasaki方程式に対して適用し、解の時間大域存在の計算機援用証明を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度確立した時間発展方程式の解軌道を厳密に求積する計算機援用証明手法の基盤技術をさらに発展させ、時間大域解の存在を計算機援用証明によって実現することに成功したため、進捗状況は順調である。特に、空間多次元のSwift-Hohenberg方程式およびOhta-Kawasaki方程式に対して厳密な数値求積を用いた時間大域存在が計算機援用証明によって示されたことは、これまでにない成果である。この結果は、本方法の適用範囲が広範囲であることを例証し、本研究による寄与が明確化されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果は論文としてまとめられ、現在投稿中である。さらに、時間発展方程式の解軌道を厳密に求積する計算機援用証明手法の次なる研究対象として、解をフーリエ級数以外で表現する場合にも対象を拡げることを計画している。具体的には、方程式が定義される領域を球面や円筒形などとし、解をフーリエ関数以外の基底関数で構成する解の検証理論を考案する予定である。この方策によって、研究対象により一般的な領域上での偏微分方程式や球対称性や軸対称性を仮定した偏微分方程式を統一な手法で扱えるようになる。
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