研究課題/領域番号 |
22K03417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
皆本 晃弥 佐賀大学, 理工学部, 教授 (00294900)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ウェーブレット解析 / 画像処理 / ウェーブレット / リフティングスキーム / Gyrator変換 |
研究開始時の研究の概要 |
深層学習や敵対的生成ネットワークを用いると,高精度で画像改ざんや内視鏡画像から早期癌の検出・検知が可能だが,人間にはその根拠は分からない.命に係わる診断や人の尊厳に係わる鑑定などは,説明可能な方法で行うべきである.そこで,本研究では,これまでの申請者らのウェーブレットに関する研究の知見を生かし,「説明可能な特徴量」抽出法およびそれに基づいた電子透かし法,早期がん検出法,画像改ざん検知法などの画像処理法の開発を行う.本研究によって,ウェーブレット変換の拡張による「説明可能な特徴量」が抽出できれば,ウェーブレット変換の画像処理への応用に新しい展開をもたらすものと期待される.
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研究実績の概要 |
本研究では,従来のウェーブレット変換に別のスキームや変換等を組み合わせ,ウェーブレット変換を拡張し,画像から数学的に解釈可能な特徴量を抽出し,電子透かし法,早期がん検出法,画像改ざん検知法などの開発を通じて,ウェーブレット解析に対する新たな知見・応用を得ることを目的としている. 初年度は,主に以下のような3つの成果が得られた. 一つ目は内視鏡画像からの早期大腸がんの検出法の開発である.本手法は,Dual-Tree Complex Wavelet Packet Transformと主成分分析を組み合わせたもので,既存の深層学習手法とは異なり,データが少ない場合でも有効であり,92%の精度でがんと正常領域を識別できた.また,本手法で利用する特徴量は局所解釈可能なものであるため,検出結果の理由を説明できる. 二つ目は電子透かし法の開発である.電子透かしは,デジタルデータ(例えば画像や音声,動画など)に見えない形で情報を埋め込む技術で,デジタルコンテンツの不正なコピー,改ざん,盗用などに対して追跡や証拠提供が可能となる.本手法は,2重ツリー複素離散ウェーブレット変換と量子化を組み合わせたもので,幾何学的な攻撃やノイズの混入に対して強いという特徴がある. 三つ目は顕微鏡画像から染色石綿を検出する手法の開発である.本手法は,ダイアディックウェーブレット変換とサポートベクターマシンを組み合わせたもので、高い精度で石綿像を分類できることを確認した.今後,アスベストを含む建材処理が増えることから,解体現場ですぐにアスベストの存在を判定できる道筋が見えたことは重要である. これらの成果は,ウェーブレット解析の可能性をさらに広げ,解釈可能性を有した新たな画像処理技術開発につながるものと期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,Dual-Tree Complex Wavelet Packet Transform,ダイアディックウェーブレット変換に基づく特徴量と主成分分析やサポートベクターマシーン(SVM)を用いて,以下のような成果をあげた. (1)内視鏡画像から早期大腸がんを検出する手法を開発した.データが少ない状況でも92%の精度でがんを特定でき,局所的に解釈可能な特徴量を利用することで検出理由も説明可能である. (2)新たな電子透かし法を開発した.デジタルデータに見えない情報を埋め込み、不正な使用に対する追跡や証拠提供が可能になる.特に,幾何学的な攻撃やノイズの混入に強い特徴をもつ. (3)顕微鏡画像から染色石綿を検出する手法を開発した.高い精度で石綿を検出でき,現場で迅速なアスベスト判定ができる道筋を示した. これらの成果は、ウェーブレット解析のさらなる可能性を示唆している.これらは,2022年のInternational Conference on Wavelet Analysis and Pattern Recognition及び19th International Conference on Information Technology: New Generationsという査読付きの国際会議で発表された.以上のことより,おおむね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き文献調査を行いつつ,2022年度の結果を踏まえて,次の項目に従って研究を遂行する. (1) ロバストな電子透かし法の開発:著作権保護のために電子透かし法を用いる場合は,画像編集や画像圧縮などが施されても電子透かしが消去されにくいことが重要で,このような電子透かし法をロバストな電子透かし法という.前年度までの成果および申請者らがこれまで開発した電子透かし法をベースとして,ロバストな電子透かし法を開発する.さらには,これまでに申請者らが開発したリフティング・スキームも併用し,画像の特徴を反映させたフィルタを構成し,透かし入り画像の高画質化も図る. (2)内視鏡画像からの高精度な早期がん検出法の開発:前年度までの成果と申請者らがこれまで開発した内視鏡画像からの早期がん検出法に基づき高精度な早期がん検出法を開発する.その際,リフティング・スキームを併用して早期がん領域を学習するフィルタを構成し,抽出精度の向上を図る. (3)顕微鏡画像から染色石綿を検出:前年度までに開発した手法を改良して,検出精度を図るとともに,現場で使えるようにデプロイを試みる. これらの研究を研究協力者である大学院生と協力しながら実施する.
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