研究課題/領域番号 |
22K03423
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 大輔 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50188025)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | max-plus代数 / 粒子系 / ファジーセルオートマトン / 可解系 / セルオートマトン / 基本図 / max方程式 / 漸近挙動 / 数理モデル / 離散系 / 可積分系 / 非線形系 |
研究開始時の研究の概要 |
Max-Plus方程式の数理モデルの構築手法について基礎から見直し、理論面と応用面の両方から手法の確立を目指す。理論面では、解の振る舞いの解析学的メカニズムと、解のパターンの幾何学的メカニズムに着目し、確率モデルも視野に入れながら、モデル構築のための厳密解析と手法の開発を目指す。応用面では、具体的な現象を対象に、Max-Plus方程式特有の強みを活かした数理モデルについて有効性の検証を行い、コンピュータープログラムによる実装やライブラリ開発を最終目標とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、(1)可解なmax方程式の探索とその一般化、(2)max-plus多項式の分解の一意性、(3)粒子系の3次元基本図の解析、(4)ファジーセルオートマトンの漸近解の解析の4点について主に研究を行った。(1)については、解の複雑度が多項式オーダーになるものについて、空間依存性にパラメータを導入することにより、可解なmax方程式の一般化に成功した。また、常差分タイプのmax方程式に関する解析にも初めて取り組み、一定の成果の導出に成功した。(2)については、max-plus多項式の幾何的表現の凸包による分解を利用して、因数分解に相当する基本多項式の分解の一意性の証明に取り組んだ。分解の具体的なアルゴリズムについては我々は既に得ていたが、最終的な基本多項式のセットが分解の方法によらず一意的であるかについて、限定的な場合について解析を行い、証明に成功した。(3)については、1次元離散空間中を時間発展則によって移動する多粒子系について、運動量の空間平均の漸近挙動の解析について研究を行った。系の挙動を表す状態図として、密度-運動量平均の依存性を表す基本図と呼ばれるグラフが重要であるが、運動量平均の密度のみによる依存関係の一意性は、初期値により担保できない場合がある。そこで、粒子密度、および、それと独立な別の保存量によって運動量平均を表すと一意的な3次元グラフが導出できる場合について、グラフの厳密な導出に成功した。(4)については、セルオートマトンの時間発展則を多項式によって連続化したファジーセルオートマトンについて、時間無限大での解が一様解になるものについて解析した。従来は、空間サイトの状態値が加重平均になっているタイプの一般的証明が知られていたが、そのタイプに属さない、より難度が上がったタイプの時間発展則について、区間縮小の方法をうまく利用することで証明に初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の進捗状況は、当初の計画に従って順調に進行していると認識している。まず、本研究の最終目標は、研究課題に掲げたように、max-plus方程式を用いた数理モデル構築のための手法の開発とその応用であるが、そのためには、理論的基盤の構築が必須である。max-plus方程式については、主に可積分系・ソリトン系、離散幾何、量子系、最適化の諸分野を中心に発展してきたが、max-plus演算の数学的特徴により、それぞれの分野の特性に合わせた個別の理論構築をせざるを得ないのが実情である。そこで本研究では、対象とする分野の特性によらない、より包括的・一般的な理論の構築を目指して、max-plus系についての数学の基礎に踏み込んだ基盤構築が必要と考えている。本年度の研究では、従来には知られていなかった基礎理論の導出に成功しており、その意味で今後の本研究の発展を支えるための準備段階が順調に整ったと認識している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、最終的には、max-plus方程式の理論的基盤の形成と、それを応用した数理モデルの構築を目指している。このために、モデル形成のための対応力が高い新しい理論の開発を研究の全期間にわたって行うことを予定している。本年度に得られた成果は、その理論開発のスタートを構築するものであると認識しているが、まだ個々の具体的な系について新しい知見が得られたという段階であり、より一層の一般化・深化が期待される。そこで、次年度以降においては、本年度に取り上げたテーマの成果の一般化に取り組み、理論の完成を目指す。また、数理モデルのmax-plus演算による系の表現の一般性や多様性についても研究を今後すすめたい。我々は既に新しい数理モデル表現をmax-plus演算によって構築しつつあるが、特定の対象に限定されたものであり、汎用性のある手法と言えるには至っていない。そこで、数値計算による具体的な検証をしつつ、max-plus方程式をどういう対象にどのように用いれば良い数理モデルが得られるかという汎用手法の確立を目指す。
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