研究課題/領域番号 |
22K03424
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
小澤 正直 中部大学, AI数理データサイエンスセンター, 特任教授 (40126313)
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研究分担者 |
河野 泰人 中部大学, 工学部, 教授 (40396180)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 量子力学 / 観測可能量 / Bornの公式 / Kochen-Speckerの定理 / 量子測定 / 所有値再現可能性 / POVM / 測定値間主観性 / 量子測定理論 / 量子インストルメント / 量子測定誤差 / 認知心理学 / 質問順序効果 |
研究開始時の研究の概要 |
1980年代に本研究代表者は、量子測定の概念が、物理量の作用素環上の正規化された完全正写像値測度(量子インストルメント)によって数学的に特徴付けられることを示して量子測定理論の数学的基礎を確立し、それ以後、小澤の不等式などの成果によって量子測定理論の発展をリードしてきた。近年、新たな潮流として、古典的2乗平均平方根誤差を量子測定に拡張する問題、正しい測定の状態依存的定義を確立する問題、また、認知心理学における質問順序効果と回答再現効果を両立させる量子測定モデル構築の問題などが注目を集めるようになった。本研究では、量子インストルメント研究の蓄積に基づいて、これらの問題を解明する計画である。
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研究実績の概要 |
量子力学の公理によると観測可能量の測定はその固有値の中から一つの値をBornの公式に従って確率的に選び出す操作である。しかし、Kochen-Speckerの定理によって全ての観測可能量にその固有値を付与する可能性は否定される。従って、観測可能量の測定によって得られる個々の値は無意味であり、量子測定に真の値は存在せず、その確率分布だけが意味を持つ、としばしば唱えられてきた。本研究は、この定説に挑戦して、観測可能量の測定は、測定の直前に測定対象が所有していた所有値を再現するものであるという「所有値再現可能性」を数学的に厳密に定義し、 量子測定の正しさは、古典物理学同様「所有値再現可能性」によって保証されるという新しい見方を提案することを目的とする。そのために、これまでの研究で得られた量子完全相関の概念を用いて所有値再現可能性を「事前被測定物理量と事後メータ物理量が測定の初期状態で完全相関していること」と定義する。本研究では、量子完全相関の推移性を利用して、この性質が更に複数の観測者による同一の物理量の同時測定が全て同一の測定値を導くという、いわゆる、測定値間主観性を導くことを示し、測定値の一意性と定義可能性を示して、測定値が無意味であるという定説を否定することができた。次に、この性質が観測可能量の測定に特有のものであり、いわゆる一般化観測可能量(POVM)の測定には、一般化できないことを示した。ここで、POVMとは、正作用素値の測度で、観測可能量が射影作用素値測度と一対一に対応することから、観測可能量の概念を拡張するために定式化された概念で、Bornの公式を一般化して、各状態における測定値の確率分布を定めることができる。しかし、本研究では、POVMの測定においては、「所有値再現可能性」が成立せず、POVM測定に真の値は存在せず、その確率分布だけが意味を持つことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に計画していた「所有値再現可能性の解明」に関する課題をほぼ完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の研究課題について、研究を推進する計画である。(I) 「質問順序効果と回答再現効果の両立可能性の解明」: これまでの研究で質問順序効果と回答再現効果に整合する量子インストルメントモデルを構成したが、モデルを確定するパラメータの一意性が示されるのは、Clinton-Gore データセットなど少数のデータセットに限られる。今後の研究で、モデルパラメータの一意性の問題を解明し、一意性が成り立つデータセットの特徴付けを導くことを目標とする。(II) 「量子測定誤差概念の確立」: これまでの研究でガウスの2乗平均平方根誤差の量子拡張となる誤差測度が満たすべき公理として、次の項目を挙げた。(i) 操作的定義可能性; (ii) 対応原理; (iii) 健全性; (iv) 完全性。今後の研究では、上の4 条件を満たす量子2乗平均平方根誤差について、構成法や新たな性質を明らかにすること、望ましい条件をさらに追加して、適切な誤差概念をさらに絞って行くことを計画している。
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