研究課題/領域番号 |
22K03428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 康明 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50455622)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | パターン形成 / 細胞接着 / 反応拡散系 / 数理モデリング / 形態形成 / 分岐理論 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞が隙間なく並んだ細胞シート上では,細胞の疎密がつくる空間パターンや,疎密の時間的振動パターンが観察される。化学反応で駆動されるパターン形成に比べて,力学的な要素が駆動する,細胞の疎密を伴うパターン形成の理解は進んでいない。本研究課題では,細胞シートにおいて力学的な因子によって生じるパターン形成を記述するための,数理解析が可能な連続体モデルを構築する。細胞シートの時空間パターンの発生原理を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
実験的に報告されている,2次元培養表皮細胞系がつくる空間的な粗密のパターン形成に対する数理モデルとして,細胞密度と細胞間接着に起因する応力を変数とする空間2次元の連続体モデルの構築を行った.簡単のため応力の非対角成分を無視し,細胞密度と圧力の2変数のモデルの導出に成功した.モデルは初期細胞密度,細胞の局所的な重なりや圧縮に対する最大許容密度,細胞接着の強度をパラメータとして持っており,これらの量が空間パターンに与える影響を調べることが可能となっている.接着強度を主要なパラメータとして数値計算を行った結果,接着強度がある閾値を超えると細胞密度の一様状態が不安定化してスポット状の空間パターンが発生し,閾値以下ではパターンを生じないことを見出した.これは共同研究者によって実験的に見いだされた培養表皮細胞集団のパターン形成をよく説明する結果となっており,細胞接着の効果のみで空間パターンが生じうることを示している.また得られたパターンは非チューリング的であり,表皮細胞系での新しいパターン形成のメカニズムを示唆するものとなっていると思われる.またこの空間パターンが細胞のランダムな運動に対しても維持されるかどうかを調べるため,密度が保存量であることを考慮したランダムノイズを密度の方程式に導入して数値計算を行った結果,空間パターンは一定の強度のノイズに対してロバストであることが明らかになった.続いて初期細胞密度と最大許容密度に対するパターンの依存性も調査し,実験的に妥当なパラメータ範囲で空間パターンが生じることを示した.計算結果は実験結果とあわせて論文準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画であった,細胞の収縮力のみに起因する細胞シートの疎密パターン形成の数理モデル構築に成功している.また実験とよく対応する良好な数値計算結果を得ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
数値計算結果の理論的な解析に着手する.安定性解析を行い,パターンが生じるための細胞接着強度,細胞密度,最大許容密度の関係を明らかにする.また研究計画に従い,得られた数理モデルをより広範な現象を記述できる形に拡張していく.
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