研究課題/領域番号 |
22K03436
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
宮口 智成 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (10367071)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 一般化ランジュバン方程式 / 非ガウス性 / 拡散性の揺らぎ / 高分子系 / コロイド分散系 |
研究開始時の研究の概要 |
流体中の微小粒子はブラウン運動と呼ばれるランダムな運動を示す。多数の微小粒子が混在し、非常に混み合っている状況下では、ブラウン運動は (異常拡散や非ガウス性などの) 多様な統計的性質を示す (このような複雑なブラウン運動の例として、細胞内におけるタンパク質分子の運動が挙げられる)。本研究課題では、「拡散性が揺らぐ一般化ランジュバン方程式」という数理モデルを提案・解析し、このような複雑なブラウン運動の性質を明かにしていく。
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研究実績の概要 |
令和 4 年度は ① 拡散性が揺らぐ一般化ランジュバン系 (GLEFD) の提案および理論解析と、②ガウシアンネットワークモデル (GNM) における一般化ランジュバンダイナミクスに関する理論解析を行った。
① GLEFD の提案および理論解析: 2010年頃からランジュバン方程式の拡散係数を確率過程に拡張した「拡散性が揺らぐランジュバン方程式」が精力的に研究されてきた。しかし,平衡状態における「拡散性が揺らぐランジュバン方程式」は,(一分子計測実験でしばしば観測される) 非ガウス性を示すものの,異常拡散現象を記述できないということが問題であった。そこで,本研究課題では「一般化ランジュバン方程式」に拡散性の揺らぎを導入することで,新たな数理モデル 「GLEFD」 を構築した (マルコフ埋め込みという手法を用いた)。また,GLEFD が一般化された揺動散逸定理に従うことを示した。さらに具体例として,メモリーカーネルがベキ緩和する場合に,非ガウス性と異常拡散現象を示すことを理論的および数値的に確認した 。
② GNM における一般化ランジュバンダイナミクスに関する理論解析: これまで,ラウスモデルなどの線形高分子の中心モノマーが一般化ランジュバン方程式にしたがうことが示されている。しかし,中心以外のモノマーや,線形高分子ではない場合(環状高分子など) のモノマーダイナミクスが,どのような発展方程式に従うかは不明であった。本研究課題では,拡張された GNM について,どのモノマーも一般化ランジュバン方程式で記述できることを示した。また,この一般化ランジュバン方程式のメモリーカーネルが,モノマーの平均 2 乗変位から計算できることも示した。平均 2 乗変位は実験において容易に観測できるため,この結果は特に重要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 拡散性が揺らぐ一般化ランジュバン系 (GLEFD) の提案および理論解析: 令和 4年度は、GLEFD の構築と 2つの具体例 (拡散性が揺らぐ非整数ブラウン運動・ダイマーモデル) に関する理論解析の結果を論文にまとめた (Physical Review Research 誌に受理済)。これらの結果は令和 5 年度以降に高分子系やコロイド分散系を解析する上で非常に重要な役割をはたすことが予想される。また,上記の研究内容のうち,「拡散性が揺らぐ非整数ブラウン運動」に関する部分は,当初の計画を超える内容である。一方で,当初予定していた「拡散係数のテンソル量への拡張」は次年度の課題として持ち越された。
② GNM における一般化ランジュバンダイナミクスに関する理論解析: 当初は流体力学的相互作用を持つ線形高分子系 (Zimm モデルなど) を解析する予定であったが,令和4年度に得られた結果から,より一般的なモデルである GNM を対象とできることが分かった。この結果も,令和 5 年度以降に高分子系を解析する上で非常に重要な役割をはたすはずである。また,この結果は査読付論文誌へ投稿準備中である。
これらのことから、全般的な進捗状況としてはおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和 5 年度は,「流体力学的相互作用を持つ高分子モデルが,拡散性が揺らぐ一般化ランジュバン方程式 (GLEFD) で記述される」という仮説の検証を中心に進める。まず,流体力学的相互作用を持つ線形高分子 (Zimm モデル) について,単一モノマーダイナミクスを数値シミュレーションと理論解析の両面から調べる。また,それと平行して,「ガウシアンネットワークモデル (GNM) における一般化ランジュバンダイナミクス」についての理論解析結果を精密化し,その結果を論文にまとめる。その後,余力があれば,GNM に流体力学的相互作用を導入した場合の,数値シミュレーションと理論解析についても進める。
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