研究課題/領域番号 |
22K03445
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
守 真太郎 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70296424)
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研究分担者 |
中山 一昭 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (20281040)
紅林 亘 弘前大学, 教育推進機構, 助教 (70761211)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | Hawkes過程 / 負の二項分布 / べき指数 / デフォルト時系列データ / 非平衡相転移 / ネットワーク / 確率過程 / 非マルコフ / 相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
理解が進みほぼ完成した体系となっている平衡系と異なり,非平衡系は事象個別の特性が反映し普遍的な理解が得られているとは言えない.我々は社会・経済現象を非平衡統計物理学の観点から,つまり系の構成要素と相互作用のミクロと現象というマクロをつなぐという観点から研究してきた.そこでの核心をなす問は,社会・経済現象にある普遍的な数理構造の解明である.本研究では,非マルコフ確率過程における非線形性・ネットワーク構造・情報のエージング効果と非平衡相転移の関係を理解する。さらに,社会・経済現象のデータを用いた解析を行うことで,現象の背後の普遍的な数理構造を解明する.
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研究実績の概要 |
1.ポリア壺とHawkes過程の関係の解明 これまでポリア壺過程とHawkes過程の関係については未解明のままで、ポリア壺過程はイジングライクな相転移から通常拡散ー異常拡散相の相転移などの多様な相転移をすることが知られている一方、Hawkes過程については定常ー非定常相の間の相転移と臨界点での強度分布の指数が知られているのみで、両過程間の関係は分かっていなかった。我々は、多期間線形ポリア壺過程の連続時間極限としてマーク付きHawkes過程を構成し、線形ポリア壺過程とHawkes過程の関係を記述した。特に、マーク付きHawkes過程の臨界点近傍での強度分布のべき指数を導出し,マークなしHawkes過程の結果を一般化した。 2.離散時間負の二項分布過程とデフォルト時系列分析 金融時系列のモデル化ではHawkes過程が用いられることが多い。我々は1.で導入した多期間ポリア壺の極限として離散時間負の二項分布過程を導出し、デフォルト数時系列データのモデリングに応用した。従来の離散時間Hawkes過程とは異なり、デフォルト数の分散をうまく記述することが出来ることを示した。また、多業種のデフォルト時系列データにも応用し、業種間でのデフォルトの影響の伝搬の様子を記述した。 3.ネットワーク上の非線形ポリア壺過程 非線形ポリア壺は安定固定点の数が変化するときにイジング的な相転移を行うことが知られている。通常のポリア壺過程では1次元的なネットワークにおいて、過去の格子点のすべての影響を受ける場合に相当する。我々は過去の影響の伝搬にネットワーク構造を導入し、格子・ランダムグラフ・スケールフリーネットワークの構造を持つ場合の相転移構造を調べた。ネットワーク構造は連続転移の普遍クラスには影響せず、不連続転移の不連続性に影響することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多期間ポリア壺過程とHawkes過程の研究に並行し、ネットワーク上の非線形ポリア壺過程の研究も進行している。ネットワーク構造を決めるパラメータを変更しても連続相転移の普遍クラスは変化しないこと、さらに、不連続転移では、不連続性がネットワーク構造に依存し、格子構造に近いランダムネットワークであれほど不連続性が小さくなることを発見し、論文としてまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
1.ネットワーク上の非線形ポリア壺の相転移を深く理解するために、ネットワーク構造を決めるモデルパラメータωとネットワーク構造の関係の理解を深める。特に、時間と共にパラメータωが変化するモデルに拡張し、パラメータを格子構造をとる値(-1)にべき減衰で漸近する場合、漸近の仕方によって相転移が異なることが分かっている。その点を詳細に分析し論文としてまとめる。 2.多期間ポリア壺過程の連続時間極限として導出したマークつきHawkes過程の強度の臨界指数を数値的に検証する。特に、べき減衰カーネルは時系列データのモデリングでも使われることが多く、そのときにべき指数の検証は興味深い。
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