研究課題/領域番号 |
22K03446
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 上智大学 (2023) 九州大学 (2022) |
研究代表者 |
小林 浩二 上智大学, 理工学部, 研究員 (10711905)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | トポロジカル量子系 / 磁性ワイル半金属 / スピンホール効果 / 機械学習 / 輸送現象 / 臨界現象 / 相転移 / 異常ホール効果 / 量子臨界現象 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、トポロジカル物質と呼ばれる新しい種類の物質が注目されている。本研究は、そのトポロジカル物質の理解に必要な基本的性質の一つである量子臨界特性を調べることを主要な目的とする。 特に、不純物や欠陥などを含む乱れた結晶や合金のような系は理論や解析計算による取り扱いが困難であり、いまだに解明が進んでいないため、本研究では高性能な計算機と独自に改良した計算アルゴリズムを用いた精密な数値シミュレーションを行うことでその性質を明らかにする。また、開発した計算コードを公開、共有することで研究分野の発展に寄与することを目指す。
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研究実績の概要 |
並進対称性の破れた磁性ワイル半金属における伝導特性と、乱れのあるトポロジカル物質の相図決定について研究を行った。本年度は特に、カゴメ層状強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2における異方的スピンホール効果の解明と、補償フェリ磁性ワイル半金属Ti2MnAlの有効モデル構築、さらに機械学習を用いたトポロジカル量子系の相図決定手法の改良を行った。 Co3Sn2S2は大きな異常ホール角を示すことが知られていたが、スピンホール効果の性質については詳しく調べられていなかった。そこで有効模型を用いて磁化の角度とスピンホール伝導率の関係を調べた。その結果、Co3Sn2S2上に強磁性体を接合することで、電場のみで強磁性体の磁化をスイッチさせる高効率デバイスが作製できる可能性があることが明らかになった。本研究成果は論文として出版した。 Ti2MnAlは高集積高効率なデバイスの材料として期待されている。その特性の解明に向け、数値計算に適した低エネルギー有効模型を構築した。本模型は単純でありながらもワイル点の位置や異常ホール効果が第一原理計算の結果を再現する。模型およびいくつかの計算結果をまとめて論文として出版し、国内外の会議で発表した。その後も、本模型を用いてさらに発展的な計算を進めている。 機械学習は近年革新的な発展を見せており、物理学においても使われるようになってきた新しい研究手法である。相転移の研究にも利用できることが分かっているが、実際には導入が難しく活用は広がっていない。そこで、まず画像認識による相図決定の手法を低計算コストで使いやすいものに改良することを試みた。特に最近話題になっているTransformerのアルゴリズムを取り入れた手法も開発した。その途中経過を国際・国内会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁性ワイル半金属における有効モデルの構築と、それを用いた計算が複数の物質について順調に進んでいる。特に、Co3Sn2S2における積層方向スピンホール効果の研究成果は、当初の予測を超えて新しい磁化スイッチデバイスの開発につながる有用なものであった。 さらに本年度手がけた、機械学習手法の改良は順調に進んでおり、新しい手法を取り入れることで今後の量子臨界現象の研究が加速すると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ワイル半金属の有効模型を用いる研究が順調であるため、今後はカゴメ層状強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2についてはバルクだけでなく薄膜の性質も有効模型を用いて調べる予定である。補償フェリ磁性ワイル半金属Ti2MnAl、反強磁性ワイル半金属直方晶CuMnAsについても有効模型を使った計算を推進する。 同時に、新しい機械学習手法の習得と改良、導入を進め、研究の推進に役立てる方針である。
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