研究課題/領域番号 |
22K03448
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
福井 隆裕 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10322009)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導体 / チャーン数 / Z2数 / 戸田格子 / 可積分系 / トポロジカル相 / エンタングルメント / エッジ状態 / 熱伝導方程式 / 高次トポロジカル絶縁体 |
研究開始時の研究の概要 |
量子力学的状態を記述する波動関数は複雑に絡み合っている。こうした量子絡み(エンタングルメント)を解すと、その背後にあるきれいな状態が見える可能性がある。こうした観点から物質のトポロジカルな性質の解明を目指す。このアイディアの最も有用な点は、対称性に護られたトポロジカル相が、その対称性の破れにどの程度安定であるかを議論できることである。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、多様なトポロジカル相の研究を量子エンタングルメントの視点から行うことである。R4年度は、「高次トポロジカル熱伝導系におけるコーナー状態」と「戸田格子の周期解とチャーン数」に関する研究成果について報告をした。R5年度は、まずこれらの成果を論文としてまとめることに取り組んだ。その結果、2本の論文が出版された。特に戸田格子に関する論文は、Papers of Editors' Choiceに選ばれて、JPS Hot Topicsとして日本物理学会誌やJSPSのWEB上で紹介された。 また、新たな課題として「トポロジカル数の実空間表示」に取り組んだ。物性物理学におけるトポロジカル数は、通常は波数空間のベリー曲率を用いて定義される。波数空間で定義されると言うことは、系に並進対称性がなければならない。これは、トポロジカル数が完全結晶に対してのみ定義されることを意味している。したがって、少しでも乱れが入ると系の並進対称性は失われ、その結果ブロッホバンドで記述することができなくなるため、ベリー曲率は定義できなくなる。系のトポロジカルな性質は消失するのか? 一方、トポロジカル数は、系に多少の摂動が存在しても安定して同じ値を持ち続けることを意味している。このように、トポロジカル絶縁体、すなわちトポロジカル数で特徴づけられる物質の性質は、物質の普遍的な性質を記述するものであることが重要な点である。だが、我々は一般的に不完全な結晶に対してトポロジカル数を計算する方法を知らない。 こうして、不完全な結晶においては、波数空間ではなく実空間でトポロジカル数を計算することが重要となる。これまでにも幾つかの実空間における計算は知られているが、波数空間での計算に比べて分からないことが多い。このような動機から我々は今年度「巻き付き数のトポロジカルな実空間表示」を研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果の詳細を詰めて、無事に論文として発表された。また、トポロジカル数の実空間表示に関しても重要な成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカル数の実空間表示に集中する予定である。近年、物質のトポロジカルな分類に関する研究は、フォトニック結晶、力学系等の古典系や、海流等の流体系にも拡張され、特に非一様な系への応用が盛んになってきている。こうした状況ではトポロジカル数を直接実空間で議論する理論が必要となる。この一般的な視点に、エンタングルメントの視点を合わせて研究を進める。
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