研究課題/領域番号 |
22K03454
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
島村 孝平 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (60772647)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
|
キーワード | 熱伝導度 / 分子動力学法 / 機械学習 / 多元素不規則系 / Green-Kubo公式 |
研究開始時の研究の概要 |
熱電材料等への応用に、より低い熱伝導度を持つ物質の発見と低減機構の解明が求められる。開発中心が多元素組成で複雑な不規則性構造を持つ物質へと向かう中、機械学習原子間ポテンシャル(MLIP)を使った分子動力学計算とGreen-Kubo(GK)公式に基づく熱伝導度計算法(MLIP-GK法)は、このニーズに応えられる潜在力を持つ理論計算手法である。そこで、多様な教師データを生成し効率的学習が可能なデータ駆動的手法を組合せ、多元素不規則系物質探索へ利用可能な計算枠組みの構築を行う。熱伝導度の要素分解時に生じる従来法の困難も打ち崩し、先行研究の低熱伝導度物質設計指針を援用し、新たな候補物質の発見を目指す。
|
研究実績の概要 |
初年次の目標は、機械学習原子間ポテンシャル(MLP)とGreen-Kubo(GK)公式に基づく熱伝導度計算に、データ駆動的アプローチを融合させ、多様な組成・構造を持つ物質に対しても熱伝導度計算を行えるように改善することである。データ駆動的アプローチとして、能動学習法等を用いて多様性の高い訓練データを獲得し効率的に学習する方法の整備を行った。また、目標の一つであった、原子論的機構調査のために部分熱伝導度を求める手法を提案した。熱流束は、MLPの訓練対象で無い「原子要素」によって構成される。このためにMLPの熱流束は、MLPの重みの初期値に依存して実は値が変わってしまう。合計の熱伝導度に対しては、少なくとも解析的には、この不定性の影響はないことがすでに先行研究で明らかになっている。しかしながら、部分的な熱伝導度、例えば、元素寄与や周波数空間における熱伝導度に大きな影響を与え、これらの値が定まらない問題が生じている。全熱伝導度は求められるものの、熱伝導度の起源を探索するためのより深い解析に支障が出ていた。そこで、MLPの訓練時に、重みの初期値に依って生じる余分な熱流束を削減するデータ駆動的アプローチを考案した。具体的には、訓練時に熱流束を定義し、それをMLPのコスト関数に正則化項として導入した。この正則化項は、熱流束を小さくするように機能する。これにより、重みの初期値依存性を削減し、部分熱伝導度の計算が行えることを確認した。全熱伝導度だけでなく、部分熱伝導度も解析対象にすることができ、熱伝導度起源のより深い探究が可能になると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、MLP+GK法による熱伝導度計算の整備を行えている。
|
今後の研究の推進方策 |
GK公式に基づく手法に摂動分子動力学(pMD)法が在り、合計の熱伝導度だけでなく、部分熱伝導度を評価するために役立つ。pMD法には拡張性があり、最近では、原子毎の熱伝導度を評価する方法、または、フォノン解析法のように熱伝導度の周波数依存性の議論できる方法が提案されている。初年度で、MLPの重み依存性を除いて部分熱伝導度を見積もることのできる手法を作ることができた。MLPとpMD法を組み合わせて、研究実施計画通りにテスト系での検証と新規熱電材料の探索に進みたいと考えている。
|