研究課題/領域番号 |
22K03466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
山形 浩一 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 特任准教授 (30743520)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 量子統計 / 局所漸近正規性 / 漸近表現定理 / 漸近ミニマックス定理 / 量子推定 / 漸近正規性 / 量子ガウス状態 / 量子中心極限定理 |
研究開始時の研究の概要 |
量子情報理論の一分野に,未知の量子状態に対する究極の推定方法を論ずる量子推定理論がある.一般に,最適な量子推定量を解析的に導出することは極めて困難である.しかし,推定対象の量子状態が十分たくさんある場合,量子統計モデルの推定問題は,局所漸近的には解析が比較的容易な量子ガウス状態族の推定問題に帰着できることが近年明らかにされつつある.この性質を量子局所漸近正規性(quantum local asymptotic normality; q-LAN) という. 本研究では新規に導入した量子尤度比の分布収束に立脚した新しいq-LAN理論を構築し,古典LANと同様で柔軟な理論の実現をめざす.
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研究実績の概要 |
最も大きい目標であった漸近表現定理の証明の完成に至る。この定理は量子統計モデルの列が局所漸近正規性を有してかつ漸近D不変性という性質を持つ場合に、任意の量子的統計量の列を量子ガウス状態族の統計量に帰着できることを主張する。この定理は古典統計理論における漸近表現定理の量子統計への拡張となっているが、漸近D不変性を要求する点が古典統計との大きな違いである。漸近D不変性は決して特殊な条件ではなく、量子統計モデルを表現するヒルベルト空間が有限次元でかつI.I.D.モデル列の場合には必ず成り立つ。また非I.I.D.モデル列で漸近D不変性を持つような例も見つかっている。漸近表現定理の証明はフォン・ノイマン代数の位相の性質を積極的に活用することで実現した。
量子漸近表現定理を利用することで多くの統計的に重要な定理を導出することができる。実際我々は、量子漸近表現定理を用いて漸近ミニマックス定理や正則推定量の限界を導出することに成功した。これらの定理は漸近的な重み付き平均二乗誤差の下界が極限量子ガウスモデルの重み付き平均二乗誤差の下界である Holevo bound と一致することを主張している。この下界を我々は漸近表現バウンドと呼んだ。漸近表現バウンドはI.I.D.モデル列の場合はモデル列のHolevo bound と一致するが、非I.I.D.モデル列においては新規のバウンドとなっている。
この研究成果は査読付きの学術論文に掲載されることが決まっている。またこの研究成果とこれまでの量子統計に関する研究の経緯についての講演を大阪大学にて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最も大きい目標であった量子漸近表現定理の証明を完成させ、論文掲載も決まったので、十分に順調な進展であるといえる。量子漸近表現定理の応用として漸近ミニマックス定理などもすでに示されており、期待通りの威力を発揮している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針は、得られた量子漸近表現定理の応用を考えることである。漸近表現定理から多くの定理が誘導されることが期待でき、それらをできるだけ多く提案していく。またこれまでほとんど手を付けてこられなかった非I.I.D.モデル列の量子局所漸近正規性での応用を考えていく。
今回得られた量子漸近表現定理は非常に強力な結果であるが、いくつか未解決問題も残されている。例えば今回の理論で導入された漸近D不変性が何を意味しているのか、まだ十分には明らかになっておらず、さらなる理論展開の余地が残っている。これらの問題に様々な角度から取り組み明らかにしていく。
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