研究課題/領域番号 |
22K03469
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
日高 芳樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (70274511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 時空カオス / 弱い乱流 / 液晶電気対流 / ソフトモード乱流 / 欠陥乱流 / 乱流拡散 / 相関関数 / 記憶関数 / 粗視化拡散係数 / 輸送現象 |
研究開始時の研究の概要 |
局所的な秩序と大局的な無秩序が共存する時空カオスによる、拡散や伝導といった輸送現象の物理的性質を明らかにするために、電圧を印加した液晶に生じる液晶電気対流を用いて実験研究を行う。 研究手法としては、統計物理学や物性物理学でこれまで発展してきた手法を応用する。まず、時空カオスに混入した微粒子の運動から、ブラウン運動の理論を用いて拡散の性質を明らかにする。また、液晶の磁場応答や微粒子に対する重力を用いて、外力応答の観点から時空カオスの性質を調べる。さらに、揺らぎを記述するために発展した統計物理学の手法を応用し、相関関数や記憶関数から時空カオスの揺らぎの性質を明らかにする。
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研究実績の概要 |
液晶電気対流系の時空カオスの一種であるソフトモード乱流を対象に、空間構造の性質を明らかにした。ソフトモード乱流は粗視化すると局所的な対流ロールの向きが時間空間的に変化している。そこで、シャドウグラフ法によって観測された(オイラー的観点)流れ構造から画像解析によって局所的なロールの向きを抽出し、それについて空間相関関数と秩序変数を得た。とくに、流体の非線形性を変えるプラントル数に相当する実験パラメーターである印加電圧の周波数を変化させることによって、対流構造がどのように遷移するかを明らかにした。 ソフトモード乱流による乱流輸送現象に影響を与える、水平面内の対流ロールの運動を、粒子画像流速測定法を流れ構造の画像に応用することによって観測した。対流系では、鉛直方向の輸送が系の非平衡パラメーターに対してスケーリング関係をもつことはわかっていたが、今回、水平面内の対流ロールの運動に対しても、速度の平均と分散が同様のスケーリング関係をもつことを明らかにした。 昨年度に引き続き、液晶電気対流の時空カオスの1つである欠陥乱流による拡散の性質の機構解明のために、振動対流系の理論モデルの数値計算を行った。昨年度の粗視化拡散係数に続き、相対拡散係数とリアプノフ数を用いて、その拡散の主に局所的な性質を明らかにした。 昨年度は、ソフトモード乱流に混入した微粒子の拡散(非熱的ブラウン運動)の測定(ラグランジュ的観点)に対して、ランジュバン方程式を仮定することによって、易動度の外力依存性を考察した。しかしながら、時空カオスのように空間構造をもつ系においては、摩擦係数を記憶関数に置き換えた、一般化ランジュバン方程式を適用するべきと考えられる。そこでまず、微粒子の位置座標データから速度相関関数を得て、さらに相関関数から記憶関数を得る手法を開発し、実際に記憶関数を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に記したことは概ね取り組むことができている。また、昨年度の「今後の研究の推進方策」に記した「PIVによる水平面内の対流ロールの運動の観測」「時空カオスに混入した微粒子の拡散(非熱的ブラウン運動)の測定(ラグランジュ的観点)に対して記憶関数を得る手法の開発」も取り組むことができた。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトモード乱流の発生に大きく寄与する南部-ゴールドストーン・モードを磁場によって抑えると乱流拡散の性質が大きく変わることが、非熱的ブラウン運動に対する粗視化拡散係数で明らかにされている。そこで、「PIVによる水平面内の対流ロールの運動の観測」を、磁場によって南部-ゴールドストーン・モードを抑えることによって行い、この運動がどのように影響されるかを明らかにする。 非熱的ブラウン運動の記憶関数を得る手法を開発したが、実験的に不充分な点があるので、その点を改良して、記憶関数から時空カオスの性質の詳細を明らかにする。 昨年度作成した液晶電気対流の準1次元系で生じる時空カオスである、角度偏向振動の理論モデルに対して、振動対流系で行った粗視化拡散係数、相対拡散係数、リアプノフ数の解析を行い、より現実的な時空カオスの拡散の性質を明らかにする。 時空カオス(弱い乱流)から発達乱流へ遷移する過程で、時空構造がどのような変化を示すかを、空間構造の相関関数や、非熱的ブラウン運動の粗視化拡散係数や記憶関数を用いて明らかにする。とくに、多様な時空カオスから普遍的な発達乱流へどのように遷移するかを明らかにする。
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