研究課題/領域番号 |
22K03474
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
田崎 晴明 学習院大学, 理学部, 教授 (50207015)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 多体系の秩序と対称性の破れ / スピングラス / 量子多体系のダイナミクス / スピンポンプ / 量子多体系 / 対称性に守られたトポロジカル相 / トポロジカル絶縁体 / トポロジカル指数 / 平坦バンド系 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル物質や強相関量子多体系の基礎理論に数理物理学的な方法と視点からアプローチし、長期的には、数学と物理学の新たな交流とそれに伴う発展の基盤作りに資することを目指す。 具体的には、量子スピン系、相互作用する多粒子系などの量子多体系におけるトポロジカル相、特に対称性に守られたトポロジカル相(SPT 相)の理解を深めるため、厳密な指数定理の拡張と開発、非自明なトポロジカル相が出現する条件の探索、Lieb-Schultz-Mattis 型の定理の拡張などに取り組む。平坦バンド系などを手がかりに超伝導状態、超固体、トポロジカルな量子相を実現する可解模型を考案することも射程に入れる。
|
研究実績の概要 |
今年度は、量子多体系のトポロジカル秩序とも深い関係のある古典的なスピングラスの秩序の問題に、糸井千岳、向田寿光と共同で取り組み、汎用性のある基本的な定理を証明した。量子系、古典系を問わず、多体問題での秩序は、長距離に及ぶ影響の伝播に注目する【長距離秩序】と対称性を破る無限小の外場への応答に注目する【秩序パラメター】の二つの量で特徴づけるのが一般的かつ伝統的な方法である。特に、「長距離秩序がゼロでなければ対応する秩序パラメターもゼロでない」ことを示す定理を Griffiths 型の定理と呼んでいる。Griffiths 型の定理はいくつかの古典スピン系、量子スピン系で証明されていたが、それらは全てランダム性のない系で、ランダムな相互作用や磁場が本質的なスピングラス系への拡張は全く知られていなかった。我々は、スピングラスにおいて、【長距離秩序】に相当する「レプリカオーバーラップの広がり」が、「エドワーズ・アンダーソン秩序パラメターがゼロでない」、そして、「三つのレプリカの系で実空間でのレプリカ対称性の破れが起きる」という二つの【秩序パラメター】がゼロでないことを意味することを証明した。 また、量子多体系の平衡化のダイナミクスの問題にも取り組み、自由フェルミオン系を中心にしていくつかの強い結果を得た。特に、自由フェルミオン鎖で任意の初期状態からの不可逆な緩和の存在を示した結果はブレイクスルーだと考えている。現在、二つの論文が査読中でありさらに論文を準備しているので、来年度に成果を報告したい。 また、量子スピン系におけるポンピングを特徴づける整数値をとる指数を定義することに成功した。これについては、さらに研究を進め論文発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は中心になる量子多体系のトポロジカル相の問題だけでなく、関連する周辺の問題にも時間をかけて取り組んだ。 特に、スピングラス系の秩序についての基本的な定理の証明に成功したのは大きな収穫だった。 また、計画にもあった量子スピン系のダイナミクスについては、一定の時間を割いて取り組み、いくつかのブレイクスルーがあった。論文の公表は次年度に持ち越したが、この息の長いテーマにつて成果が得られたのは特筆すべきである。 量子多体系のトポロジカル相に関連する研究はじっくりと結果を蓄積する段階で、スピンポンプを特徴づける指数などいくつかの未発表の結果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
量子多体系のトポロジカル相に関連して、以前に開発した指数定理の証明をさらに拡張し、スピンポンプやモデル空間でのループの同値性などを議論できる整数の指数を研究している。これをさらに推し進めたい。また、S=1 ハイゼンベルクスピン鎖というもっとも基本的なモデルが(一意でギャップを伴う基底状態を持つと仮定して)非自明なトポロジカル相にあることを示すという構想をずっと持っていて、少し予備的な結果が得られるつつある。2024年には海外出張で専門家と議論するチャンスもあり、これらの研究を進展させて論文で公表したい。 また、2023年度に一定の成果が上がった量子多体系のダイナミクスの問題についても、いくつかの方向性が見えてきたので、何とか将来に繋げる研究を進めたい。
|