研究課題/領域番号 |
22K03478
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 伸吾 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (40779675)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 超伝導 / マヨラナ準粒子 / ギャップレス相 / トポロジー / 対称性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、多自由度を持つ超伝導の物質開拓が進み、多自由度(スピン、軌道、副格子など)から形成される多様なクーパー対が提唱されている。しかし、多様なクーパー対を実験的に検証する方法は確立しておらず、多自由度の観点から超伝導物性を開拓する必要がある。本研究では、ギャップレス状態に焦点を当て、多自由度に伴う量子効果が超伝導物性に及ぼす影響を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、超伝導の現代的分類理論を基礎とし、電子の多自由度に由来する量子現象が超伝導物性に及ぼす影響を調べることを目的としている。本年度は、(1)一般化したカイラル超伝導におけるスピン緩和率の解析、(2)超伝導化ディラック半金属における磁束中のギャップレス状態の分類に関する研究を行った。以下ではそれぞれの研究成果について述べる。 (1)カイラル超伝導とは、クーパー対が非自明な軌道角運動量を持ち、自発的に時間反転対称性が破れた相である。代表例は超流動ヘリウム3のA相である。この相の低エネルギー有効模型はディラック方程式と類似し「ディラック超伝導」とも呼ばれている。近年、カイラル超伝導の概念は強いスピン軌道相互作用を持つ物質へ拡張さ、「ワイル超伝導」-超伝導ギャップのスピン縮退が破れたカイラル超伝導ーが現れることが示された。 本研究では、強いスピン軌道相互作用を持つ物質において包括的なカイラル超伝導の分類を行い、第3の状態として「非ユニタリーディラック超伝導」が存在することを発見した。この相では、スピン毎に異なる励起状態を持つ。我々は各カイラル超伝導相のスピン緩和率を計算し、低温における温度のべき乗から各相が区別可能であることを示した。 (2)超伝導化トポロジカル絶縁体に磁束を入れたとき、表面ディラックコーンに誘導されたマヨラナ準粒子が磁束の端に現れる。本研究では、本機構を超伝導化ディラック半金属へ拡張した。ディラック半金属の場合、磁束中にディラックコーンに誘導されたギャップレス状態が現れる。我々はディラック半金属が持つ対称性を利用し、磁束中のギャップレス状態の分類を行った。分類の結果、螺旋対称性の場合に、マヨラナ条件を満たすギャップレス状態が現れることを示した。本研究は、磁束を利用したマヨラナ準粒子の探索に新しい方向性を示すと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたように、バルクのギャップレス相(カイラル超伝導相)におけるスピン緩和率、および、磁束中のギャップレス相に関する研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では以下の研究課題に取り組みたい。 (1)偶パリティカイラル超伝導の研究 昨年度の研究を、偶パリティ超伝導へ拡張する。1バンドの偶パリティ超伝導は、スピン1重項ペアのみが可能であるため、ディラック超伝導のみが許される。他方、多バンドの偶パリティ超伝導の場合は、多自由度に由来するペア状態が存在し、多様なカイラル超伝導相が現れる可能性がある。本研究では、偶パリティカイラル超伝導の分類理論とその超伝導物性に関する理論を構築する。 (2)多自由度を有する超伝導における表面状態の研究 近年、UTe2において、カイラルエッジモードの実験的観測が報告された。STMで観測された表面状態は、理論と異なり非対称なスペクトルを持っている。この非対称性は表面の粗さやへき開面の依存性などが原因であると考えられていた。しかし、近年、我々はこれらの依存性とは関係なく電子が多自由度を持つ系では非対称なスペクトルが現れ得ることを理論模型を用いて示した。本研究では、この計算に基づき、電子の多自由度と表面状態の関係を明らかにしたいと考えている。
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