研究課題/領域番号 |
22K03484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内田 健人 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (40825634)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 高次高調波発生 / 極端非線形光学 / 超高速現象 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では非線形光学応答の一種である高次高調波発生に着目し、固体における非平衡電子状態の新たな超高速分光手法としての確立を目指す。特に電子を駆動する高強度光パルスの電場波形を、光ゲート法を用いて精密に制御し、通常の測定では測定困難なスペクトル情報を簡便に取り出せる高次高調波分光システムの構築を目指す。これをファンデルワールス2次元物質の一種である、WSe2およびWTe2に適用して試料のもつ非自明な電子構造を明らかにする。さらには光ゲート法の特性を生かして、半古典的な電子軌道を制御することによりバレー自由度の制御の実現まで目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は非線形光学応答の一種である高次高調波発生に利用して固体における非平衡電子状態を計測する新たな超高速分光法を確立することを目的としている。特に、偏光ゲート法を利用して通常の測定では測定困難なスペクトル情報を簡便に取り出せる高次高調波分光システムの構築を目指している。当初の計画では、2022年度は中赤外光の偏光ゲート法用の光学系をマイケルソン干渉計を用いて構築することが目標であった。実際にマイケルソン干渉計を用いた中赤外光のダブルパルス化や電場波形計測系の構築等、計画に沿った研究を進め偏光制御用素子の導入前の段階まで到達した。加えて偏光ゲート光学系の検討をしていく中で、同様の実験光学素子を用いて高調波発生自体を干渉計内部で行うことで、高調波の時間波形が高い精度と信号雑音比で計測可能であるという新たな着想に至たった。この手法は、従来の強度スペクトル情報に加えて位相情報を得ることで実時間上での非平衡電子状態ダイナミクスをより詳細に観測することが可能になり、偏光ゲート法に組み合わせることでより強力な手法となりうる。実際に、高調波干渉光学系を構築し、150アト秒以下の時間分解能で高調波発生の位相情報を取り出せることを確認した。また、薄膜半導体試料における高調波の観測に高次高調波干渉計を適用することで、試料中の励起子が中赤外光電場下で示すエネルギー構造変化を反映した特徴的な高調波実時間波形の観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では本年度は偏光ゲート法を行う光学系の構築する予定であった。計画に沿った実験系の構築等を行い、偏光制御素子を導入する前の段階までを本年度は達成した。それに加えて、偏光ゲート光学系の構築を検討する段階で、類似した光学系による新たな計測手法の着想を得て、その構築と実際の物質系への適用を行った。このように、本研究課題では当初の計画を超えて、本研究課題の目的を達成する上で重要な要素技術の開発に成功した。したがって、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度構築した検出系と、当初の計画である偏光ゲート光学系を組み合わせることで高次高調波発生の2次元分光など、当初の計画を超えた新しい分光法の確立につながる可能性がある。そこで今後は、本年度構築した検出系をより広い物質群に適用するとともに、偏光ゲートも含めた励起中赤外光パルスの波形制御技術を進展させる。
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