研究課題/領域番号 |
22K03485
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝至 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 特任教授 (00192617)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 多重強秩序状態 / 秩序変数直接外場制御 / 強磁性 / 強多極子秩序 / 外部応力 / 外部磁場 / 磁場中超音波分光 / 多重極限実験 / 多重強秩序状態直接外場制御 / 強弾性秩序 / 強誘電性秩序 / 強磁性秩序 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は,層状ペロブスカイト誘電体において,強弾性と強磁性の共存を発見した。一方,重希土類3元化合物において,強弾性・強多極子秩序状態を見出した。 本研究では,外部応力で強磁性磁化方向や電気多極子の秩序方向を直接制御し,反対に磁場で強弾性自発歪みをスイッチして結晶構造を制御できることを実証可能である。このようなマクロ現象としての分かりやすい実証はこれまで殆ど無く,応用にも重要である。本研究の成果は,マルチフェロイックスの学理解明だけで無く,得られる新機能はSDGs達成に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究は,次の2つの研究目的を達成するために行うものである。 ①マルチフェロイック誘電体(CH3NH3)2CuCl4(以下,MACuC)において,外部応力で強磁性磁化方向を直接制御し,反対に磁場で強弾性自発歪みをスイッチして結晶構造を制御できることを実証する。②希土類化合物における多極子秩序変数の複数外場によるスイッチングを実証し新奇のマルチフェロイクス学理を構築する。 ①,②それぞれに対する実績を次の通り列挙する。 ①について:〇昨年度,溶液周囲の雰囲気を減圧する溶媒蒸発法による単結晶育成法で結晶育成速度を9倍にすることに成功したが,本年度は純良な種結晶を分離し,その種結晶から超音波実験に適切な試料サイズをもつ大型単結晶の育成に成功した。〇比熱の温度依存性測定を繰り返し行いデータの再現性をチェックして,Bmab相にはTc=8.9Kの強磁性転移以外の相転移はなく,強弾性相と強磁性相の共存を確定した。〇応力による磁化方向のスイッチングを確かめるため初年度は,SQUID磁束計用に簡易型の応力を印可した状態での磁化を測定を精密化して,磁場方向を結晶軸のa,b,c軸それぞれに印可してデータの変化を検証した。〇以上の成果を,日本物理学会において公表した。 ②について:〇昨年度発見したHoNiAlの弾性ソフト化についてC66を注意深く測定したところTC=13KとT1=5Kに弾性ソフト化を見出した。TC以上の温度域のソフト化はキュリー・ワイス的温度依存性を示し4f電子の結晶場基底状態1重項と励起状態1重項との4極子相互作用によるものである。4極子間相互作用定数の負号からOxy4極子の反強的相互作用と推定される。 ①と②共通の実績:〇歪み計を購入して磁場中歪み計を作成する予定であったが,予算が減額されたため歪み計も自作した。精密測定に必要な性能を競るため予備実験と改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.MACuCにおける強弾性相と強磁性相の同一温度域における共存がほぼ確定できた。 2.昨年度から引き続き行っている,応力印可によるマクロな自発磁化の制御を検証する応力印可セルの製作も進んでいる。ただし,博士進学予定の学生が家庭事情により就職したため代表者だけで進めているため,少々時間を要している。 3.HoNiAlについては,当初の計画より研究が進展しソフト化の起源が推定できたうえ,国際会議で発表できた。2.では少々遅れがあるが3.で進展したため,1.の成果と合わせて研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方針は,達成すべき目的が同じため,昨年度の記述とほとんど同じである。すなわち, 1.I4/mmm相の[110]または[1-10]方向に一軸応力を印加すれば,Bmab相はモノドメイン化できる。その応力は,我々の測定で~105Pa程度である。実際,ピンセットでつまむだけでモノドメイン化できる。この性質を利用し,結晶を正方晶の[110]面と[1-10]面がでるように整形する。テフロンの試料ホルダーに矩形の穴をあけ,一方の面(例えば[110]面)にのみ一軸応力がかかるよう,その一方だけ穴の長さを短く整形して試料をはめ込む。これを,現有のMPMS磁束計を用いて強磁性磁化の方向を測定する。この後,試料を一旦取り出し,同一の試料に対し今度は[1-10]面に一軸応力がかかるようにセットしてMPMSで強磁性磁化方向を測定する。強磁性磁化は,直方晶のc面内長尺のa軸に平行に発生しているので,一軸応力により磁気秩序方向が制御されたか実証できる。
2.自作した歪み計を設置したPPMSを用いてMACuCの自発歪みを外部磁場により制御できるか検証する。強的4極子秩序した希土類化合物において,磁場印可により強的4極子秩序により誘起された自発歪みが制御できるか検証する。
3.希土類化合物における多極子秩序変数の複数外場によるスイッチングを実証し新奇のマルチフェロイクス学理を構築する。
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