研究課題/領域番号 |
22K03486
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大橋 洋士 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60272134)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | フェルミ原子ガス / BCS-BECクロスオーバー / 超流動 / 非平衡状態 / クーパー対形成 / Keldysh Green関数 / 非マルコフ過程 / FFLO状態 / Bose-Einstein凝縮 / フェルミ原子気体 / 非平衡現象 / 強結合効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「伝導電子などのフェルミ粒子系が超流動転移した際、どのような非平衡過程を経て超流動秩序化していくか?」を、冷却フェルミ原子ガスの高い操作性を駆使し、幅広い相互作用領域(BCS-BECクロスオーバー領域)で理論的に解明することを目指す。非平衡・非定常状態を扱える強結合超流動理論を、Keldyshグリーン関数理論を用い構築し、超流動状態に特徴的な物理量であるCooper対数、凝縮粒子数、および、超流動密度の時間発展を数値的に明らかにすることで、正常相がどのような非平衡過程を経て超流動状態に移行していくかを、理論的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究で、熱平衡状態にある3次元フェルミ原子気体におけるFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO)状態が、系を3次元光格子中に入れることで対形成揺らぎに打ち勝ち安定化できることを示したが、2023年度は、このアイデアを、非平衡定常状態にある駆動散逸フェルミ原子気体において予言されている非平衡FFLO状態の安定化にも適用できるか研究した。熱平衡系のBCS-BECクロスオーバーの研究で用いられている強結合理論の一つであるNSR理論を、光格子中に置かれた相互作用する2成分駆動散逸フェルミ原子ガスに適用し、光格子により系の回転対称性を明示的に破ると、熱平衡FFLO状態の時と同様に、非平衡FFLO状態も安定的に存在できるようになることを数値的に明らかにした。また、光格子の構造を制御したり粒子数密度を変化させて光格子による系の回転対称性の破れの効果を弱めると、3次元系であっても、FFLO状態は不安定化することも確認した。更に、非平衡パラメータを制御することで、熱平衡状態のFFLO状態と非平衡定常状態のFFLO状態を統一的に扱い、温度・相互作用・非平衡パラメータについての3次元相図中で両者がどう関係しているか明らかにした。 上記の研究に加え、非平衡「非」定常状態にある超流動状態の時間発展を数値的に追跡できるようにするための理論の構築を行った。このためには、時間発展の過程で重要となる非マルコフ過程を正しく考慮する必要があるが、非マルコフ過程を数値的に考慮する際にネックとなる「過去の情報の影響」を見かけ上回避できる手法の開発に成功した。更に、この理論を駆動散逸フェルミ原子気体に適用し、平均場近似の範囲で、超流動転移における正常相から超流動状態への時間発展を数値的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究により、量子多体系の時間発展を追跡する際の大きな困難の1つである非マルコフ過程の効果を数値的に取り扱うことが可能となった。研究では、更に、この手法を駆動散逸フェルミ原子気体の超流動状態の時間発展計算に適用、実際に機能することも確認できた。また、2022年度の研究で、熱平衡状態におけるFFLO状態が光格子により安定化できることを明らかにしたが、2023年度には、非平衡定常状態にある駆動散逸フェルミ原子気体において予言されている非平衡FFLO状態も、光格子の導入で安定化できることを具体的数値計算により示した。更に、これら2種類のFFLO状態を、温度・相互作用・非平衡パラメータについての3次元相図中で統一的に扱うことにも成功した。これらはいずれも大きな成果であり、よって、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
超流動状態の秩序化過程を解明するうえで大きな困難の1つであった「非マルコフ過程の効果」を数値的に評価する理論が2023年度の研究で構築できたので、今後はこの理論を用い、正常相から超流動状態に移行する過程でのCooper対数、凝縮粒子数、超流動粒子数の時間変化を追跡するコードの開発を行う。そして、非マルコフ過程をも考慮した理論の枠組みで、これら物理量の時間発展を数値的に求め、本研究の最終目標である「超流動秩序化過程の解明」を目指す。また、これまでの研究の過程で、非平衡状態では、単純なBCS状態とは質的に異なる(FFLO状態などの)超流動状態が得られることが明らかとなったので、フェルミ原子気体で既に実験的に実現しているs波超流動以外の新奇超流動状態実現の可能性についても、併せて理論的に探索する。
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