研究課題/領域番号 |
22K03487
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
阿久津 典子 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (40167862)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 表面荒さ / KPZ普遍クラス / 結晶成長速度の異方性 / 2次元核形成律速成長 / KPZラフニング / BKTラフニング / RSOSモデル / TSKモデル / ステップ間引力エネルギー / ファセティングの相図 / テンソルネットワーク法 / ファセット化ラフ面 / テラス面荒さ / TSK模型 / Si / ステップ・ドロプレット / ファセット化マクロステップ / 表面張力計算 / 表面荒さ計算 / 2次元核形成結晶成長 / テラス幅分布 |
研究開始時の研究の概要 |
1.結晶微斜面について「ファセット化マクロステップの形成・解消」や「表面荒さ」が表面傾斜(オフアングル、ステップ密度)によってどの様に変化するのか、普遍クラスは変化するのか、を平衡状態、および核形成律速成長・界面律速成長における非平衡定常状態について明らかにする。
2.SiCやGaNなどの半導体結晶マクロステップについて原子スケールのファセット化とメゾスケール長さのファセット化の関係解明を試みる。そのため本研究で得られるナノスケールの結果を仲立ちに、原子スケールからミクロンスケール長さまでのシミュレーションに挑戦する。
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研究実績の概要 |
*原子的ラフ・スムースと熱力学的ラフ・スムースが異なる現象であり、区別して考えるべきであることを明らかにした。
*(001)特異面についてKardar-Parisi-Zhang (KPZ)カイネティック・ラフニング点とBerezynskii-Kosterlitz-Thouless (BKT)普遍クラスに属するラフ面へクロスオーバーする付着成長カイネティック・ラフニング点の2種類あることを数値的に明らかにした。すなわち、単純立方格子モデルの(001)面は平衡状態において平衡ラフニング転移温度の1/4程度の温度では原子的にも熱力学的にもスムースである。非平衡定常状態では、以下のとおりである。2次元単数核成長領域では引き続き原子的にも熱力学的にもスムースである。成長駆動力を増やして2次元単数核成長から多数核成長へクロスオーバーする結晶成長駆動力点はKPZカイネティック・ラフニング転移点であり、表面ゆらぎが系のサイズの増大と共に発散するので非平衡相転移点である。KPZカイネティック・ラフニング点と付着成長ラフニング点の間は、原子的にスムースだが熱力学的にラフで、KPZ普遍クラスに属するKPZラフな面である。付着成長ラフニング点はラフ―ラフ・クロスオーバー点であり、付着成長ラフな面はBKT普遍クラスに属する。
*平衡状態でテラス面も側面も原子的・熱力学的スムースなマクロステップについて、成長ダイナミクスをモンテカルロ法で調べ、素ステップの前進方向とマクロステップの移動方向は反対であること、マクロステップとテラスを利用して積層欠陥を抑えられることを2次元核形成理論に基づき示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(001)面から(111)面へ傾斜している斜面について表面成長速度、および表面荒さの傾斜角依存性を調べるのが本課題の目的である。
ステップ間引力が無い単純な制限solid-on-solid(RSOS)モデルは2000年前半までに完全に調べられている、と考えていた。ところが、論文等検索しても見つからないため、ステップ間引力が有る傾斜面との比較対照系としてステップ間引力が無いRSOSモデルの(001)特異面について表面成長速度、および表面荒さを調べた。その結果、これまでの常識を覆す結果として、カイネティック・ラフニング点が二つあり、片方はKPZカイネティック・ラフニング転移点である、ということを数値的に示すことが出来た。これまでKPZ普遍クラスには多くの非平衡界面現象が属していることが明らかになるなか、結晶成長では特殊な場合を除き、長い間KPZラフ面が発見されなかった。それが、線形応答のすぐ隣の非平衡領域に存在することを数値的に明らかにした。
ステップ間引力が有る場合の表面構造について、ステップ間引力が無い場合の新たに解明された表面構造と比較し、より正確な理解が出来るようになった。
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今後の研究の推進方策 |
*ステップ間引力が無いRSOSモデルの成長速度と表面荒さは、ステップ間引力がある傾斜面との比較対照データとして重要である。KPZラフな面とBKTラフな面の関係について(001)面でどのように温度変化するのか、さらにその傾斜角度依存性を調べる。
*ステップ間引力があるRSOSモデル平衡状態の計算も含め、非平衡定常状態の表面成長速度と表面荒さの傾斜角依存性をモンテカルロ法で調べる。4H-SiCのようにファセット化マクロステップが出来易い表面への理解と応用を考える。
*これまでに得たナノスケール長さでの結果をもとに異なる長さスケールの理論研究を行っているブルガリアやポーランドの研究者と共同研究を始める。
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