研究課題/領域番号 |
22K03490
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
逵本 吉朗 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター, 研究員 (80807470)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | 量子光学 / 量子情報 / 単一光子 / 量子通信 / 量子情報処理 / パラメトリック下方変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、単一光子検出器をコヒーレント検波に適用することで、非古典光の周波数分解測定を高い分解能で実現できる新たな検出法を開発する。具体的には、まず、しきい値以下で駆動した光パラメトリック発振器により狭線幅なパラメトリック蛍光を生成する。次に、パラメトリック蛍光を単一光子レベルまで弱めた微弱局発光と混合し、単一光子検出器で検出することで、光子計数の時間信号を周波数分解したRFビート信号からパラメトリック蛍光の中心周波数と周波数幅を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、単一光子に対する高分解能周波数測定技術を確立することを目標に研究を行っている。この目標を達成するためには、(1) 単一光子検出器と微弱局発光を用いたヘテロダイン測定技術、(2) 狭帯域光子生成を実現する必要がある。今年度は、(2)に関して狭帯域光子対生成系を立ち上げその評価を行った。Type-IIの周期分極反転KTP(Periodically poled KTP, PPKTP)結晶に波長775nmの連続波レーザーを入力することで自発的パラメトリック下方変換(Spontaneous parametric down-conversion, SPDC)により中心波長1550nmの光子対を生成した。また、生成された光子対の線幅を狭窄化するため、波長1550nmの光に対して高い反射率を有するミラー2枚で構成されるファブリペロー共振器内にPPKTP結晶を配置した。これにより、共振器から出力された光子対の周波数分布は、共振器の透過スペクトルによって特徴づけられる。結晶の位相整合条件から、生成された光子対のうちシグナル光子が横偏光、アイドラ光子が縦偏光となるため、それらは偏光ビームスプリッターで空間的に分離することができる。分離したそれぞれの光子を超伝導単一光子検出器で検出し光子対の同時検出イベントの時間相関を調べると、櫛状の構造が確認でき、それぞれのピークの間隔は0.8ns程度であった。これは、共振器の自由スペクトル領域が1.25GHz程度であることに対応する。これにより、ほぼ共振器の設計通りの周波数スペクトルを持つ非古典光の生成に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、狭帯域光子源の立ち上げを行った。具体的には、周期分極反転KTP結晶を共振器の内部に配置し、775nmの連続波レーザーで励起することによって、狭帯域な光子対を生成した。また、生成された光子対の周波数特性は、共振器の設計値とよく一致していることを確認した。これにより、最終目標である非古典光の高分解能周波数測定実験を実施するための要素技術の準備が一通り完了したため、当初の計画通り順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
最終目標では、まず今回立ち上げた狭帯域光子源から生成された櫛状の周波数構造を持つ光子を周波数フィルタに通し、数モードだけを取り出す。次に、局発光と干渉させてヘテロダイン測定を行う。その際、現段階では、数モードだけを取り出した時の光子検出レートが不十分である可能性がある。そこで、共振器を構成するミラーの反射率に改良を加える予定である。具体的には、励起レーザーの波長(775nm)に対する反射率を高める。これによって、これまで共振器を素通りしていた励起レーザーが共鳴することにより、励起光強度が共振器内部で増強され、光子源の高輝度化が期待できる。さらに、共振器に反射された励起レーザーを使って共振器のロックも行えるというメリットもある。光子源の改良が確認でき次第、ヘテロダインによる高分解能周波数測定を実施する。
|