研究課題/領域番号 |
22K03497
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
棚本 哲史 帝京大学, 理工学部, 教授 (80393875)
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研究分担者 |
大野 圭司 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (00302802)
平本 俊郎 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20192718)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 量子指紋 / スピン量子ビット / PUF / 量子セキュリティ / シリコンナノワイヤー |
研究開始時の研究の概要 |
多くの電子機器がインターネットに接続できる時代が到来した。しかし、個人情報の漏洩などのセキュリティの課題が増加し、年々発達するハッキング技術に対処すべきセキュリティ技術の高度化が喫緊の課題となっている。本研究は、デバイスのセキュリティ強化の一つであるデバイス指紋の量子化を目的とする。特に、汎用トランジスタ内にランダムに存在する欠陥に局在する量子スピンの状態をデバイス指紋として利用する技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
(1)研究分担者のグループで統計を取る素子の測定を行った。まず通常の平面型トランジスタを300個以上測定した。I-Vのチップ内分布を解析してみたところ、I-VにPUF的要素が少ないことが分かった。これは元々性能が高いトランジスタを選んでしまったため、トラップなどに起因した、I-Vのばらつきが少ないこと、そして初回ということで室温で調べたことが原因であった。次に、よりばらつきが大きいと考えられる、幅3nmオーダーのシリコンナノワイヤー素子を多数(300個程度)測定を繰り返した。結果を現在、OpenCVにより解析している。OpenCVはI-Vデータを画像として、類似度を見るために使われる。単純なI-V比較では、違いを区別しにくいため、I-V自体をデータ加工して、特徴の抽出に取り組んでいる。 (2)研究協力者よりトンネルFETのチップばらつきのデータの解析を開始している。トンネルFETはシリコンナノワイヤーよりもシンプルなI-V特性を示しているため、まずは機械学習を取り入れて、サンプル間の違いを系統的に理解できるかを検討している。 (3)PUFの原因として、シリコンデバイス中のトラップ分布がある。理論的にはトラップを介した電気伝導の簡単なモデルを立てた。そしてさらに進めて、トラップそのもののコンピューティングができないかにも取り組んでいる。この一つとして、リザバーコンピューティングへの応用を考察してる。これまでに、数々のリザバーコンピューティングの性能指標を計算できるプログラムを作成した。例えば、Parity Check タスク, Short time memory タスク, timer タスクなどを計算できるようになった。そして、エコステートネットワークモデルでプログラムの計算精度を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PUF評価の第一デバイスデータの測定である。このPUF研究の基本となる同じデバイスの繰り返しをシリコンナノワイヤーにて行った。これにより統計的解析の基礎ができた。また、トンネルFET素子についてもチップ内ばらつきを検討できるデータを取得し、解析をはじめた。そして、通常のI-V特性からどのように特徴を抽出するかの検討を開始している。データの解析としては、データサイエンスなどの手法と検討中である。現在、解析の手法はいろいろとあり、どの手法が最適か、ひとつずつ試しながら検討している。 理論の面ではトラップの記述として、単一電子を利用したモデルを構築した。トラップによるノイズ測定の実験と比較しており、ノイズの原因をある程度特定できることがわかりつつある。また回路シミュレータにも展開可能なモデルも検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年中には、シリコンナノワイヤーとトンネルFETのこれまでに取得したデータの解析を終了したいと考えている。そして、来春までには、学会発表と論文投稿を計画している。解析の方法としては、OpenCVのほか、通常の機械学習を用いた類似性の検討も結果を出していきたいと考えている。またトラップのばらつきを利用したリザバーコンピューティングの可能性について、理論的なアプローチの第一回目の結果を出していきたいと考えている。2024年度以降については、より的を絞ったデータの取得とPUFとしての特徴抽出をより厳格に行っていきたいと考えている。
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