研究課題/領域番号 |
22K03506
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 高圧合成 / 炭素 / 超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,高圧合成法を用いて新しい炭素系ネットワーク物質を合成し,常圧下で存在可能な高温超伝導体を開発することを目的とする.この実現のために以下の手順で研究を進める.(1)フラーレン分子を高圧重合して3次元ネットワーク物質を合成した報告があるが,追試がほとんどなされていない.この追試と温度圧力条件の拡張によって新結晶相を探索する.(2)アルカリ金属をドープしたフラーレンを出発物質として高圧高温処理を行い,炭素の3次元ネットワーク物質のキャリア数制御を実施する.(3)放射光によるその場観察測定を活用して新結晶相の探索を高効率で行う.詳細な物性測定を多角的に行い,新物質の物性を明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究では,高圧合成法により新しい炭素系ネットワーク物質を合成し,キャリア密度の制御法も開発して,常圧下で存在可能な100 K級の超伝導体を開発することを目的としている.令和5年度は以下のように研究を進めた. 高圧高温合成の出発物質としてアルカリ金属ドープフラーレンC60を用いることにより,キャリア密度の制御を試みてきた.令和4年度にはNaxC60 (x = 1~3), K3C60, RbC60について高圧高温処理を行ったが,本年度はこれまでに実験を行っていない化学組成の物質を用いて,高圧高温処理の条件とプロセスも変えて実験を実施した.具体的にはLiC60とNaC60をまず常圧で合成し,大型放射光施設SPring-8 BL04B1において高温高圧下でのX線粉末回折の「その場観察」実験を0 ~ 15 GPa,室温 ~ 600度の範囲で実施し,新しい結晶相の探索を行った.その結果,NaC60においては,常温常圧では立方晶であるが,高温高圧処理後は格子定数が大幅に縮まった三方晶の結晶となることを初めて見出した.またこの結晶は常圧下でも安定であることが分かった. この成果について指導学生が国際シンポジウムで発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように,本研究の手法を用いて初めて常圧下でも安定な新しい結晶の合成に成功した.少なくともNaC60においては高圧高温処理の条件とプロセスが分かったので,さらに今後多くの結晶を合成することで,物性測定にも展開が可能である.このため,進捗は順調であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の方針を軸として研究を進める. 高圧合成で一度に得られる物質の量は微小である.上述の,令和5年度に発見したNaC60の新たな結晶相について,物性測定に必要な分量の高圧合成を進める.磁化率,電子スピン共鳴,電気伝導度,比熱,近赤外-可視-紫外分光,ラマン分光などの物性測定を行い,この新物質の電子状態,フォノン状態を明らかにする. 令和4年度に発見している,K3C60の新たな高圧相(常圧では安定ではない)について,高圧下で物性測定を行うことを試み,この相の電子状態を調べる. これまでに行っていない化学組成の出発物質を用いて,さらに新たな物質の探索を進める. 主要な成果について,学会発表や学術論文誌への投稿を行う.
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