研究課題/領域番号 |
22K03513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
多田 靖啓 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (20609937)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 軌道効果 / 磁場 / 電子間相互作用 / SPT / 対称性 / 多極子 / 不純物 / スピンネマティック / ディラック電子 / 量子相転移 / 臨界現象 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ディラック電子系の磁場中における相転移及び臨界現象を理論的に議論する。特に、これまでの平均場近似に基づく先行研究から歩を進め、より精度の高い計算を行い、この系の普遍的性質を明らかにすることを目指す。そのために、ディラック電子系の基本的モデルにおける絶対零度の性質だけでなく有限温度の振る舞いなどについても、解析を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は、磁場が導く軌道効果と関連して、電気多極子を議論した。電気多極子は電場への応答量であるが、電場をスカラーポテンシャルの勾配としてではなくベクトルポテンシャルの時間変化としてとらえることで、磁場中での空間対称性操作への応答として記述することができる。本研究では、このような枠組みを見出すことを通して、エネルギーギャップのある相互作用する量子多体系における電気多極子指数を提案した。提案された多極子指数は空間対称性に守られた高次多極子状態をよく特徴付ける。また、この指数を用いることで、開放境界条件の下で系はギャップレスになることを解析的に示した。本研究では、ごく自然な設定で初等的な考察から多極子指数を定義している点が特徴的であり、また、それまで知られていた多極子の定義に関わるいくつかの問題を克服できている。
多極子には種々のものがあり、スピン系では例えばスピンネマティック状態が有名である。本年度は、磁場中1次元スピンネマティック状態についても研究を進め、その不純物効果を解析した。1次元スピン系においてはもともと、不純物応答を用いて系のバルクの性質を読み取ろうとする研究が盛んに行われてきた背景があり、本研究はその流れを汲んだものである。数値計算と解析計算を組み合わせることで不純物まわりの挙動を明らかにし、核磁気共鳴実験においてスピンネマティック性がどのように反映されるのかを議論した。また、関連する研究として、スピンネマティックと伝導電子との結合によって生じる現象についても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度より取り組んでいる磁場中での空間対称性に関する研究の進展が遅れている。研究の本質的な部分は完了しているため、今後、速やかに論文としてまとめたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度提案した多極子指数の性質をより詳しく調べていく予定である。当初の研究では、多極子絶縁体の典型的なモデルについてのみ議論し、そこでは多極子指数がうまく振る舞うことを示した。しかし、これらのモデルは一般的観点からは限定的な系であり、多極子指数がどのような系にまで適用可能なのかは非自明である。具体的なモデル計算を通して、この問題に取り組む。 また、本年度の研究では電気多極子の中でも双極子と四重極子については議論したが、八重極子については未着手である。本研究で着目するような大域的な多極子は3次元では八重極子まであり、これまでの研究を八重極子へ拡張しようと試みることは自然である。これまでのアプローチをもとに取り組む予定である。
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