研究実績の概要 |
本研究の目的は、色中心を量子センサとして利用した磁気ダイナミクスのイメージング手法を開発することである。2023年度は、(1)磁性体、(2)超伝導体、(3)マイクロ波のイメージング、(4)温度測定における機械学習の利用、(5)光学収差の影響、(6)新規量子センサの開発、(7)幾何学的量子操作の実証、(8)スピン多体系における量子効果の理論的検証などについて研究を行った。 (2,3,6,7,8)に関しては論文が採択された。(1,4,5,6)に関しては論文を投稿または準備中である。(1,2,3,4,5,6)は、磁気ダイナミクス測定の実証やその性能向上に関わる実績である。(7,8)は、センサ自体やその周辺のスピンにおける興味深いダイナミクスを明らかにした実績である。 (1)では、磁気光学カー効果と量子センサでの同時に磁性体の磁壁移動を動画として取得して比較した。実験条件や解析方法を工夫してフレームレートを向上させた。また、スピン波伝搬のイメージングに成功した。現在はその振幅の定量的な解析を進めている。(2)では、センサの不均一性を抑制し、超伝導量子渦の定量的な磁気イメージングに成功した。(3)では、広帯域なマイクロ波イメージングを高感度化する手法を実証した。(4)では、温度測定において機械学習を適用した。従来法よりも測定条件にロバストな推定であるという結果も得られている。(5)では、ダイヤモンドによって生じる光学収差が感度や分解能へ与える影響を調査し、イメージングに適切な基板の薄さを決定した。(6)では、量子トンネル遷移を100%に近い確率で起こす幾何学的量子操作を実証した。(7)では、窒素同位体濃縮が六方晶窒化ホウ素中の量子センサの性能を向上することを示した。(8)では、パルス制御を利用する動的核スピン偏極において、その性能が多体効果で制限されることを指摘した。
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