研究課題/領域番号 |
22K03524
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 健人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90883504)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 量子センシング / 磁気共鳴 / ダイヤモンド / 六方晶窒化ホウ素 / スピントロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
固体中の電子スピンが相互作用することで多彩な磁性が現れる。この多彩な磁性を捉えるために、磁気力顕微鏡、磁気光学カー効果、ブリルアン光散乱、中性子散乱、ミュオンスピン回転、核磁気共鳴など、数多くの測定法が開発されており、それぞれの利点欠点に応じて使い分けられている。本研究では、他の手法を圧倒する高い空間分解能で磁場や温度を定量的に測定できる量子センサに注目し、ミクロな磁気ダイナミクスを直接検出する技術開発を行う。この新原理の精密磁場イメージング手法を典型的な磁性材料に対して適用し、その応用を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、磁性体の局所的なダイナミクスを可視化するため、ダイヤモンド中の色中心を量子センサとして利用する磁場・温度のイメージング装置を開発することである。今年度は、(1)磁性体のイメージングに注力した。さらに計測精度を高めるために、(2)センサの励起光強度依存性、(3)温度測定における機械学習の利用、(4)光学収差の影響、(5)発展的な量子操作、(6)新規量子センサの利用などの検証を行った。現在、(1,2,4,5,6)の内容に関して学術論文を執筆しており、その一部の内容は投稿中である。これらの技術は、量子センサの磁場感度や空間分解能を更に高めるものであり、局所的なスピンダイナミクスの可視化に有用である。 (1)では、垂直磁化膜の磁区を磁気光学カー効果と量子センサで同時にイメージングする技術を開発し、クリープ運動を動画として取得した。低温装置と組み合わせることで、超伝導量子渦の定量的な磁気イメージングに成功した。また、マイクロ波やスピン波の検出精度を高め、そのイメージングに成功した。(2)では、センサの共鳴周波数が励起光強度に対して指数関数的に変化する現象を発見した。(3)では、温度測定において機械学習を適用し、従来法と同程度の精度が得られることを明らかにした。(4)では、蛍光顕微測定の光学収差で感度や分解能が低下する影響を調査し、性能劣化が十分に少ないダイヤモンド基板の薄さを決定した。(5)では、ランダウツェナーモデルに幾何学的な効果を取り入れたモデルを利用し、トンネル遷移確率が100%になる幾何学的非断熱な量子操作を実証した。(6)では、六方晶窒化ホウ素(hBN)中のホウ素空孔欠陥をセンサとして利用するアイディアを検証した。ヘリウムイオン顕微鏡の集束イオンを用いたセンサのナノアレイの作製や、広帯域マイクロ波パルスによる磁場感度の向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ダイヤモンド量子センシングの技術を順調に発展・応用させられただけでなく、新しい量子センサの開発で局所ダイナミクスの検出に有利な方向性を示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
磁性計測への量子センサの適用と六方晶窒化ホウ素(hBN)量子センサの開発をさらに推進する。 感度・空間分解能・定量性など、色中心量子センサの利点を生かせる磁性材料や現象へ適用し、本技術の有用性を示す。磁性体のイメージングでは、測定プロトコルを最適化して時間・空間分解能を高め、磁壁の挙動観察を試みる。並行して、細線デバイスの漏れ磁場から電流分布を可視化する実験・解析を試み、それらの技術を培う。これらの技術を組み合わせ、異常ホール効果やスピン移行トルクなど、磁化と電流が同時に関わるダイナミクスの観測を目指す。超伝導体に関しても、デバイス状に加工し、量子渦の電流駆動や熱ゆらぎの可視化を試みる。量子センサの共鳴周波数から遠く離れたマイクロ波磁場でも検出できるセンシングプロトコルをイメージング測定で利用するためのセンサ・装置開発を行い、マイクロ平板マイクロ波共振器やスピン波の特性を調査に利用する。加えて、今後、グラフェンやファンデルワールス磁性体などナノ薄膜の磁性・温度をイメージングするためにダイヤモンド上への微細デバイス作製に着手する。 hBN量子センサは世界的に研究が始められたばかりであり、基本的な物性が未解明である。励起光強度依存性により正確性の向上、マイクロ電極を用いた電場依存性の検証、生成条件や量子操作の最適化による感度向上を試みる。特に、十分な電場依存性確認できれば、磁性と電気分極が絡み合うマルチフェロイック材料のイメージングへの有用性が示せる。加えて、スタンプ法によって量子センサを含むhBNナノ薄膜を測定対象へ密着させる技術を確立し、磁場、温度、電場のイメージングを試みる。hBNはファンデルワールス結晶であるため、厚み100 nm以下の薄膜を測定対象に貼り付けることが出来る。ダイヤモンドよりも高い密着性があるため局所スピンダイナミクスの検出に有利である可能性がある。
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