研究課題/領域番号 |
22K03531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
矢野 英雄 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70231652)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 低温物性 / 超流体 / 二流体流れ場 / 量子渦 / 量子乱流 / 超流動ヘリウム |
研究開始時の研究の概要 |
新しい乱流として、超流体と常流体が混合する二流体流れ場の乱流が注目を集めている。超流体と常流体の流れは互いに干渉しない性質を持つが、超流体の渦である量子渦が存在すると、その渦を媒介として二つの流れが干渉する。本研究では、二流体流れ場の乱流を観測し、その量子渦構造を決定する。この結果と量子渦運動シミュレーションの比較から、二流体乱流の実空間および運動量空間の構造を決定する。この新たな乱流の研究は、乱流の基本的な性質の理解の進展や、関連する研究分野への波及が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、超流動ヘリウムの超流動と常流動の二流体流れ場で発生する乱流について、量子渦の観測からその渦構造を研究する。最近の我々の研究から、振動物体が駆動する流れ場で量子乱流が発生すると量子渦輪を放出することを明らかにし、量子渦輪を実験的に検出する方法を確立した。これらの研究成果をもとに、二流体流れ場で発生する乱流を、放出する渦輪の検出によって明らかにする。これまでの研究実績は以下のとおりである。 1.細管でつないだ二つの層を超流動ヘリウムで満たし、片方の層から細管に沿って熱を流すことで細管内に二流体流れ場を駆動する。熱流による流れ場の制御で、臨界速度以上で乱流が発生する。細管内径より十分細い量子渦輪検出器を細管端のすぐ外側に置き、量子渦輪の検出を行った。臨界速度以上の流れ場で量子渦輪を検出することに成功し、二流体流れ場の乱流から量子渦輪が放出されることを明らかにした。 2.乱流発生から量子渦輪検出までの時間を測定したところ検出時間は広く分布し、その統計則は指数分布を示すことを明らかにした。この結果は、乱流から放出される量子渦輪が時間もしくは方向に対しランダムに運動することを示している。これは我々がこれまでに明らかにした振動物体が生成する乱流と同様の現象であることを確認した。 3.流れ場の速度上昇にともない、量子渦輪の平均検出頻度が上昇する。この結果は、流路中に発生する乱流の量子渦密度の上昇を示唆する。これは、過去に行われた第2音波による量子渦密度上昇の研究結果と一致する。 4.量子渦輪の平均検出密度は、ある速度を境に急上昇することを見出した。過去に行われた量子渦密度上昇の研究結果との対応から、流路内の乱流がその速度で変化するためと考察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり二流体流れ場を駆動する装置の開発・製作をおこなった。流れ場は細管内を流れる熱流で制御する。細管以外のパスを流れる熱流の問題点と解決方法について検討し、加えた熱の大部分を細管流路に限定した。これによって、乱流が発生する臨界速度が、他の研究結果と概ね一致することを確認した。 細管内で発生した乱流からの量子渦輪を検出するために、乱流が発生する細管内の位置を限定した。さらに、量子渦検出装置を細管端にできるだけ近づけた。これらの配置を実現することで、乱流から放出される量子渦輪の検出に成功した。これらは、おおむね計画どおりの成果である。 しかし、世界的なヘリウム供給事情の悪化のため、研究に必要な液体ヘリウムの供給が十分ではなく、本研究の目標である量子渦輪の運動状態を調べるに十分な観測までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに二流体流れ場の乱流発生と量子渦輪の放出を確認した。我々の実験のセットアップでは、二流体流れ場の量子渦運動と、渦輪放出の流れ方向に対する異方性を観測することができる。これらを踏まえ、以下の研究を推進する。 1.二流体流れ場の量子渦運動のシミュレーションを行う。量子渦輪は渦芯の周りを循環する流れによる自己誘導で運動する。常流動の流れの向きと同じ方向に自己誘導される場合は、常流動流と渦芯の相互摩擦によって渦輪は縮小すると予想される。一方、対向する向きでは、ある速度以下で相互摩擦により拡張する。この予想される異方的な渦輪運動が、渦輪の検出頻度に表れると予想される。 2.我々の実験装置で二流体流れ場の流れ方向を変化させ、量子渦輪の放出頻度の流れ方向に対する異方性を検出する。この実験結果と1のシミュレーションの結果を比較し、二流体流れ場の乱流における量子渦構造を、流れ方向の異方性の観点から明らかにする。 3.我々の実験のセットアップでは、細管外部に発生する二流体流れ場の乱流も観測することができる。この利点を生かし、細管外部の自由空間に発生する乱流と量子渦の直接検出から、乱流の生成機構を研究する。
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