研究課題/領域番号 |
22K03532
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
荒川 直也 中央大学, 理工学研究所, 専任研究員 (20736326)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 輸送現象 / 対称性の破れ / 光電場 / 金属 / Mott絶縁体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、円偏光や直線偏光をあてた固体の金属やMott絶縁体の電荷輸送や熱輸送、スピン輸送、熱スピン輸送を理論的に調べることにより、光による時間や空間の対称性の破れを利用する輸送現象の物理を開拓します。そして、光による対称性の破れを利用する、金属やMott絶縁体の物理の基盤を確立し、光だからこそ実現できる性質の予言、光による輸送現象の新しい制御機構の提案、物質探索や応用展開への発展につなげます。
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研究実績の概要 |
今年度の最も重要な研究成果は、円偏光のヘリシティを利用することでスピン流と電流を見分けられることを発見したことです(Arakawa et al., Comms. Phys. 6, 43 (2023))。
本研究課題では、光による対称性の破れを利用する輸送現象の物理の開拓を目指しています。
今年度は、励起光として円偏光をあてた多軌道金属のスピンホール効果と異常ホール効果の理論を構築し、スピンホール効果で生成するスピン流と異常ホール効果で生成する電流を、円偏光のヘリシティ依存性で区別できることを提案しました。また、この性質は、時間反転対称性に由来する、普遍性の高い性質であることも解明しました。ここで、円偏光のヘリシティは円偏光の回る向きの自由度で、左回り円偏光と右回り円偏光があります。本研究では、多軌道金属としてSr_2RuO_4を対象とし、円偏光をあてた場合のスピンホール効果と異常ホール効果の理論をFloquet理論と線形応答理論を組み合わせた手法で構築しました。そして、それらの輸送現象の輸送係数(スピンホール伝導度と異常ホール伝導度)を数値計算で調べることにより、ヘリシティを左回りから右回りに変えた場合、スピン流の向きは不変に保たれるのに対し、電流の向きは反転することを見出しました。また、このヘリシティ依存性は光の振動数や振幅を変えても成立することも示しました。ここで、時間反転をすると、スピン流の向きは変わらず、電流の向きが逆になります。また、時間反転で円偏光のヘリシティが左回りから右回り(もしくはその逆)に変わります。それらの性質を組み合わせることにより、上述のスピン流と電流のヘリシティ依存性の違いがそれらの流れの時間反転対称性の違いに由来していることを特定しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
時間反転対称性を破ることができる円偏光が金属のスピン輸送や電荷輸送に与える影響の本質的な影響を見いだすことができ、Communications Physics誌で出版し、プレスリリースを行うことができました。また、円偏光を二つ組み合わせた光の場合の解析もすでに終え、学会発表をすでに行い、論文投稿の準備にも着手できています。現在も研究は順調に進んでおり、光による対称性の破れを利用する輸送現象の物理の学理構築に向けて着実かつ当初の予定以上に進展しています。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の3つに取り組みます。 1、すでに成果を得て学会発表を行った、円偏光を二つ重ねた光を当てた場合の金属のスピン輸送と電荷輸送の研究成果を原著論文としてまとめ、投稿します。 2、光による対称性の破れとして今年度のものとは異なる対称性を破ることができる光を当てた金属のスピン輸送や電荷輸送の研究を行います。その成果の取りまとめも今年度中に行い、学会発表や論文投稿も終わらせます。 3、昨年度の研究とは別の金属に光をあてて対称性を破った場合の輸送現象の解析にも着手します。
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