研究課題/領域番号 |
22K03533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
田嶋 尚也 東邦大学, 理学部, 教授 (40316930)
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研究分担者 |
川椙 義高 東邦大学, 理学部, 准教授 (40590964)
森成 隆夫 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70314284)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 3次元ディラック半金属 / 量子異常 / プレーナーホール効果 / 異常ホール効果 / カイラル磁気効果 / 有機ディラック半金属 |
研究開始時の研究の概要 |
電子相関によりカイラル対称性が破れた3次元有機ディラック半金属がα-(BEDT-TTF)2I3の高圧力下で実現した。カイラル対称性が破れた系の特徴の1つは、量子異常に起因したカイラル磁気効果など散逸を伴わない特徴的な輸送現象にある。 本研究では、無機物質系と異なり、電子相関が強く、質量ギャップを伴わないでカイラル対称性が破れている特徴を備えて有機ディラック半金属を題材に、実験と理論が連携して新奇のカイラル磁気効果を開拓する。具体的には、圧力でこの系の電子相関効果を制御し、負の磁気抵抗効果やプレーナーホール効果などの検出に新奇カイラル磁気効果を開拓する。
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研究実績の概要 |
グラフェンの発見以来、ディラック半金属およびワイル半金属の物性研究が精力的に行われている。最近、本研究グループは、カイラル対称性が破れた3次元有機ディラック半金属を発見した。この系に対する興味の1つは、量子異常に起因したカイラル磁気効果などの散逸を伴わない新奇の輸送現象が現れることにある。既に無機物質において幾つかの実験報告例がある。しかし、有機ディラック半金属は無機物質系と異なり、質量ギャップを伴わないでカイラル対称性が破れているため、新奇のカイラル磁気効果が大いに期待される。本研究では、質量ゼロの有機ディラック半金属を題材に量子異常に起因するカイラル磁気効果を開拓することを目的にした。具体的には、電場Eと磁場Bの方向とそれらの強度をパラメーターにカイラル磁気効果の特徴である負の磁気抵抗効果等の散逸を伴わない輸送特性を見出すことである。以下が、グループメンバーそれぞれが担当した研究概要である。 田嶋(研究代表者):有機導体a-(BEDT-TTF)2I3が高圧力下・低温で3次元ディラック半金属であることを実験的に明らかにし、カイラル磁気効果の特徴である負の磁気抵抗効果とプレーナーホール効果の観測に成功した。さらに、異常ホール効果を検出することにも成功した。 川椙(研究分担者):有機導体a-(BEDT-TTF)2I3の純良試料を作成した。 森成(研究分担者):層間トンネルとディラックコーンの傾きを考慮した現実的なモデルを用い、ベリー位相効果と半古典的ボルツマン方程式を基に磁気コンダクタンスの計算を行い、負の磁気抵抗効果およびプラナーホール効果について、実験結果と整合する結果を得た。さらに、この系における時間反転対称性の破れが、フラックス形成によるものであることを平均場近似に基づく理論計算によって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
田嶋(研究代表者):候補物質であった有機導体a-(BEDT-TTF)2I3が高圧力下・低温で3次元ディラック半金属であることを実験的に明らかにし、カイラル磁気効果の特徴である負の磁気抵抗効果とプレーナーホール効果の観測結果の論文を公表した。なお、論文は注目論文として選出された。 川椙(研究分担者):上記の観測に必要な純良試料を作成した。 森成(研究分担者):有機導体a-(BEDT-TTF)2I3が高圧力下・低温で3次元ディラック半金属であることを理論的に明らかにし、層間トンネルとディラックコーンの傾きを考慮した現実的なモデルを用い、ベリー位相効果と半古典的ボルツマン方程式を基に磁気コンダクタンスの計算を行い、負の磁気抵抗効果およびプラナーホール効果について、実験結果と整合する結果を得た。この成果は論文にまとめ、公表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
田嶋(研究代表者):高圧下における有機導体α-(BEDT-TTF)2I3は、負の磁気抵抗効果、プレーナーホール効果、異常ホール効果の観測からカイラル対称性が破れていることは明らかである。異常ネルンスト効果の検出を計画し、温度をパラメーターにして調べ、量子異常への次元クロスオーバー効果を明らかにすることを計画する。さらに、この系の特徴である大きく傾いたディラックコーンがもたらす新規の輸送特性を開拓し、量子異常の新たな物理展開を計画する。 川椙(研究分担者):有機導体α-(BEDT-TTF)2I3の純良試料を作成する。 森成(研究分担者):高圧下における有機導体α-(BEDT-TTF)2I3における時間反転対称性の破れが、フラックス形成によるものであることが理論計算から示唆されている。このフラックス形成状態に基づき、ネルンスト効果および熱起電力の磁場および温度依存性を明らかにし、実験との比較検討を行う。また、この系の3次元的電子状態から、アクシオン電磁気現象が関与する可能性がある。この点について理論的に明らかにする。
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