研究課題/領域番号 |
22K03540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小野田 繁樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70455335)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | フラストレート磁性体 / 量子スピン液体 / 量子スピンアイス / 理論 / 界面 / 磁歪 / 電歪 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶場励起を考慮した量子スピンアイス模型における、主に高温相を良く記述する乱雑位相近似に基づいた理論的枠組みを、U(1)量子スピン液体相、および、磁気双極子秩序相・電気四重極子秩序相へ拡張し、古典・量子スピンアイス系で近年報告されている弾性係数や音速の超音波測定結果を定量的に説明する。 印加電場によって量子スピンアイス系に誘起される電気分極とU(1)ゲージ理論における仮想電場について、電歪の効果を考慮しつつ、定量的に見積もる。
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研究実績の概要 |
非自明なトポロジー・長距離量子エンタングルメント・新しいゲージ構造を示す磁性体として理論的に確立された量子スピン液体は、トポロジーを利用した新量子技術の基幹としても期待されるものの、その実験的検証方法が十分に理解されていない。本研究では、トポロジー変化を示す量子スピン液体界面に着眼し、その実験的検証方法を理論的に考案する。 これまでの研究課題で、結晶場励起を考慮した磁性希土類パイロクロアに対する拡張量子スピンアイス模型に対して、主にその高温相における磁気双極子モーメント・電気四重極モーメント・擬スピン全てに対する乱雑位相近似(RPA)に基づいた理論的枠組みを構築した。しかし、Tb2Ti2O7が内包すると考えれているU(1)量子スピン液体相においては、RPAが破綻する。そこで前年度に、U(1)量子スピン液体相を良く記述するU(1)ゲージ理論でRPAを置き換えた理論的枠組みを構築した。また、磁気双極子秩序相・四重極子秩序相などの古典的秩序相を記述する標準的手法であるホルシュタイン-プリマコフ変換に基づいた理論的枠組みでRPAを置き換えた理論的枠組みを同時に構築した。 今年度は、このU(1)ゲージ理論、および、ホルシュタイン-プリマコフ変換に基づいた2つの新しい理論的枠組みを用いて、歪みや弾性エネルギーを考慮した拡張量子スピンアイス模型の解析を行った。Tb2TI2O7の磁気・超音波・非弾性中性子散乱測定結果のフィッティングも進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲージ理論、ホルシュタイン-プリマコフ変換を用いた理論による数値計算コードの開発に想定以上に時間を要したため。また、電場の効果を考慮した第一原理計算が未だ開始できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
磁歪・電歪の効果を含めた拡張量子スピンアイス模型を、上述の二つの量子論的枠組みによる数値計算で解析していく。特に、数値計算の遅れを取り戻すため、Mathematica Licenseを増やして迅速に進める。これにより、磁歪・電歪の効果の重要性を理解するとともに、古典スピンアイス系(Dy,Ho)2Ti2O7、量子スピンアイス系Tb2Ti2O7、Pr2(Zr,Hf)2O7、Yb2Ti2O7などに対して、近年報告されている弾性係数や音速の超音波測定結果を定量的に説明していく。 モノポールHall輸送現象の理論やモノポールのジョセフソン効果の定量的解析に必要となる、印加電場が量子スピンアイス系に誘起する電気分極とU(1)ゲージ理論における仮想電場について、スピン間反対称相互作用の修正効果を考慮しつつ、量子スピンアイスの標準模型に電場の効果を取り込み、印加電場に線形な仮想電場を量子化学的計算手法によって(半)定量的に見積もる。また、定量性を高めるために、電場の2次で誘起される電歪の効果を取り込む。 量子スピンアイス系における電場の効果については、実際の物質においては表面・界面の存在により大きく修正される。そこで、これまでに高温量子スピンアイス系の候補として研究してきたスピネル酸化物Ir2O4の超格子系の密度汎関数法に基づいた大規模第一原理計算に、そこで印加電場がもたらす効果を取り込んで解析する。この結果と先述の量子化学的計算結果と組み合わせて、量子スピンアイス系におけるバルク、および、表面・界面での印加電場の効果を理論的に確立するための礎を築く。
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