研究課題/領域番号 |
22K03550
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 鋼 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20442527)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 遷移状態 / レアイベント / 分子動力学シミュレーション / 深層学習 / 説明可能なAI |
研究開始時の研究の概要 |
ソフトマターにおける遅いダイナミクスを決定する構造を分子動力学シミュレーションと深層学習を融合することによって抽出することである。多自由度系の構造変化を特徴付けるには事前に1、2個の変数を選択し自由エネルギー地形を描くことにより解析することが多い。しかし変数選択が適切でないと、実際の遷移経路を正しく評価できない。そこで多自由度の時系列データの中から適切な反応座標となる局所構造を記述する変数を抽出する技術の開発が必要となる。本研究では遷移状態理論におけるコミッターと呼ばれる関数を応用し、遷移状態を規定する局所構造を深層学習により抽出することを目指す
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研究実績の概要 |
ソフトマターにおいて構造変化の遷移状態を同定するために自由エネルギー曲面を描くことが必須であ る。分子動力学MDシミュレーションなどで得られる多自由度の時系列データの中から物理的直観に頼ることなく、適切な反応座標となる分子間構造を記述する変数を抽出する技術が必要となる。近年、深層学習を用いて反応座標を探索する研究が行われており、そこで入力層に集団変数、出力層にコミッター値が用いられる。一般に、深層学習では多重に非線形変換をしているため、どの集団変数が反応座標の学習結果に寄与しているかを詳細に説明することは困難である。そこで、説明可能なAI(XAI) を用いてこの困難を克服した。具体的には、Local Interpretable Model-agnostic Explanation(LIME) とゲーム理論に基づく Shapley Additive exPlanations(SHAP) という手法を用いて、アラニンジペプチド異性化反応における 2面角とコミッターに対して深層学習を用いた学習をし、そこで各集団変数の反応座標への寄与の度合いを求めた。ここで、コミッターとは,マクスウェル-ボルツマン分布に従うランダムな速度を与えた任意の初期構造から出発し、反応物Aよりも先に生成物Bに到達する確率として定義される。仮に初期構造が遷移状態にある場合、AとBに到達する確率が等しいためコミッター値は1/2となる。言い換えると、遷移状態とは適切な反応座標を使用したときコミッター値が1/2となるような初期構造の集合として記述することができる。LIMEとSHAPにより、予測された反応座標に対して各2面角の寄与度を与え、それは以前に報告されたコミッターテスト解析の結果を支持するものであった。また、コミッター値が1/2の遷移状態近傍のデータに対して局所的な説明モデルを与えたところ、反応座標へ寄与する主要な2面角の物理的な意味を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深層学習と説明可能なAIを組み合わせた手法をソフトマターへ応用する初めての研究であり新規性がある。特に、分子シミュレーションで得たコミッター値を学習させ、遷移状態近傍における局所的な説明モデルを与え、アラニンジペプチドの異性化反応における反応座標に対して物理的な解釈を可能にした。
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今後の研究の推進方策 |
深層学習を用いた液体の構造を区別する特徴量を抽出する研究は、多数報告され注目を集めているトピックであり、本研究課題でもこれに取り組む。特に、過冷却された水は注目すべき対象であり、温度の変化により水素結合ネットワークがどのように組み変わるのか、説明可能なAIによる判別が可能か明らかにする。
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