研究課題/領域番号 |
22K03553
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | シリコン / 水 / シリカ / 水溶液 / 分子動力学シミュレーション / 粘度 / 局所構造緩和 / 液体 / 分子性液体 |
研究開始時の研究の概要 |
液体の粘度や誘電率のような輸送係数は,液体内部の分子運動の特性を反映している.どのように分子が運動しているのか?本研究目的は,計算機と実験データを融合し,分子性液体のミクロな緩和過程を離散化し,マクロな輸送係数との接続原理を解明することである.目的を達成するために,計算機を用いて,双極子モーメント,局所応力,局所構造量を計算し,物理量の多変量時系列データを作成する.次に,機械学習における異常検知手法や主成分分析を用いて,多変量時系列データを離散化データへと変換し,緩和過程の相互相関や実験データとの接続機構を解明をする.本研究により,液体の物理学が格段に発展することが期待される.
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研究実績の概要 |
分子性液体の粘度の微視的起源と局所構造緩和を探索するために,シリコン,水,塩水,シリカの液体状態を対象とした研究を実施した.分子動力学シミュレーションを用いた計算では,局所構造緩和の素過程を検出するために,シリコンや水、シリカの配位数変化に着目し,粘度を特徴づけるマクスウェル緩和時間との関係性について調べた。結果,液体金属で得られたような単純な関係は見出すことはできなかった.ただし,マクスウェル緩和時間よりもむしろ応力の緩和挙動を注意深く観察したところ,高温状態でさえ,二段階緩和していることがわかり,長時間側の緩和時間は四面体構造に由来した局所構造緩和時間と一致することを発見した. ネットワーク形成型の液体は,強い方向性の結合を持つことに加えて,配位数が4程度と比較的小さい値を取り,時間的な揺らぎが大きくなってしまう.結果的に,非常に大きな高周波せん断弾性率を有し,この弾性率を利用して見積もったマクスウェル緩和時間は,構造緩和時間よりもかなり小さな時間(振動に相当する時間)となってしまうと考えられる.分子性液体の応力の構造緩和に直接着目することで,液体金属で見出された関係式が成り立つことは非常に重要であり,今回,三種類の分子性液体でも材料によらず成り立つことを見出した.本研究成果は,日本物理学会九州支部会で報告した. また,塩の添加により粘度が現象する水溶液の粘度の特異な振る舞いを理解するために,温度依存性に着目し,温調機能をもつ回転粘度計を設置し,水溶液の粘度取得のための準備を今年度整備した.塩と水が混ざった水溶液は典型的な分子性液体であり,異常な粘度挙動を示すことから,粘度の微視的描像の理解に寄与すると考えられる.さらに,次年度に向けて分子シミュレーションを使ってNaCl水溶液の応力のデータ取得を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子性液体のシミュレーション研究で、材料に依存しない不変的な関係性を見出すことに成功し,液体金属からネットワーク形成液体まで包含する成果を上げることに成功したので、順調に研究が進捗していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,配向緩和に着目した研究を推進する.配向緩和の素過程を検出し,回転緩和と巨視的物性の関係性を明らかにする.また,今年度得られた成果を論文として迅速に出版する.
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